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陰寒内結の便秘

便秘の証を,仲景は陰結、陽結、脾約の三種に分けており,后世の医家は風秘、気秘、熱秘、寒秘、風燥の五類に分けている。
しかしこの分類方法は往往にして臨床医には評価されていない。
近年は中西医結合を強調する余り,ある医者は僅かに攻下、潤下の両法しか知っていない,1964年版《中医内科学講義》に“憂愁思慮,情志不舒,或いは多坐少動により,気機は鬱滞し,宣達不能になる,これにより通降は失常し,伝導が行われず,糟粕が内停して,下行せず,大便秘となる”とあるが,あまり注意を払う者がいない。
例如:郭××,男,54歳。
3年来の常習性便秘で,先ず中、西薬物を用いて攻下、潤下した,暫らくは緩解するが,この1ケ月来,瀉下薬を2倍に増やしてでも足りなくなった,特にこの7日来は,承気湯、西薬及び灌腸等を頻用するもまるで排便せず,おまけに頭暈頭痛,心煩失眠,口苦口干となった。
余が診たところ,舌苔薄白,脈象沈弦である。
乃ち云く:此れは少陽の気鬱,三焦不利,津液不下の証である。
柴胡加竜骨牡蛎湯(柴胡・甘草6 黄芩・党参・半夏・桂枝・茯苓・陳皮10 大黄3 生姜4片 大棗・竜骨・牡蛎15)。
ある医師が云く:患者は3年来の常習性便秘で,導、灌腸と中薬大承気湯、麻子仁丸等を先用したが,暫らくは通便するが,すぐにまた便秘はますます重くなる,それなのに貴方は大黄を僅か3gしか用いず,しかも竜骨、牡蛎の固渋薬がある,これで本当に効くのか?
答えて曰く.“本病の証脈を合参すると,三焦鬱滞,不能宣達,通降失職,糟粕内停の便秘である,前医が効かなかったのは,攻伐薬を頻用したため,陽気が欠乏し,腑気が行らなくなっている,故にこれ以上大剤を与えて攻伐してはならない。柴胡加竜骨牡蛎湯には,既に小柴胡湯の疏肝胆理三焦がある,又党参、桂枝、生姜、甘草、大棗などの助脾温陽があり,半夏、陳皮、生姜などの辛温があり,竜骨、牡蛎などの潜陽鎮納がある,ここに収斂の弊があっても,清気は升り,濁気は降るようになる。又患者は陽気が上冲し,頭暈頭痛がある,重鎮降逆に非ざれば便は通下し難い,竜骨、牡蛎には収渋の害があるが,潜陽の益がある,故に大黄少許を佐とすれば,大便は自解する。”
薬后に大便は果して通り,継服6剤にして数年の便秘は解消した。
其の后くだんの医師が又云く:古医は朱砂、代赭石、石決明、草決明を便通に遍用しているのが,私には久しく意味が不可解だったが,もともとそういう(重鎮降逆の)意味だったのですね。
大便が秘結し,二三日か五六日に一度しか排便しないのは,燥熱が内結し,津液が干枯し,伝導が失われている場合が多い,故に承気などの諸方が尤も常用される;老人は津枯し,産后は亡血し,病后は正衰となる,血少津枯となり,腸道が失潤した者には,養血潤便が,喜用される;しかし陰寒内結,陽気不行,伝導失職となった者が,よく見落とされ,久しく不愈となるのが多い。
   朱进忠医案 より
※柴胡加竜骨牡蛎湯が陰結便秘に応用されるとは目からうろこ!

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