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無症候性蛋白尿

慢性腎炎症候群の中でも無症候性蛋白尿・血尿症候群という場合は殆ど病人に自覚症状がありません。
中医学は症状があって初めて証が決められるので、無症状のこの病気に対しては対応に困ります。
四診では僅かに尿色が黄赤だとか、面色が皓白だとか、腰酸(だるい)があるとかいうだけで、あとは脈診に頼るしかありません。
《金匱要略》の消渇小便利淋病脈証に栝蒌瞿麦丸が出てきます。
【原文】小便不利者,有水気,其人苦渴,栝蒌瞿麦丸主之。
栝蒌根二两(6) 茯苓三两(9) 薯蕷(山薬)三两(9) 附子一枚(炮)(6) 瞿麦一两(3)
「小便の出が悪いのは水気があるからで、口が渇くことが多い。それには栝蒌瞿麦丸を用いる。」
たったこれだけの意味ではまことに心許ないが中医学の解説は次のようになっている。
本証は下に水気あり,上に燥熱あり。腎気が(働かず水を)気化しないと,水気は下に内停する,則ち小便不利となる;水気が不化だと,津液が上へ回らず,久しく滋潤を失う,則ち上焦が燥熱となり,故に其の人は渇に苦しむ。上焦の燥熱は滋に非ざれば解けず、下積の陰は暖に非ざれば消えず。故に栝蒌根・山薬が潤燥を、瞿麦・茯苓が利水を、辛熱の附子が気化を分担し、腎気が自力回復できるように働きかける。栝蒌瞿麦丸は潤燥・化気・利水の三者を兼顧する良剤である。
滋・利水・暖(辛熱)の薬物なら他にも色色あろうに、この五つの薬味の性質を熟知していた張仲景だからこそ組み合わせることが出来た処方でしょう。
栝蒌瞿麦丸は我が国でも殆ど使った人は居らず、注目もされていない処方ですが、中医学では結構知られた存在です。
馬××,男,15歳。慢性腎炎で一年以上になる。
ホルモン剤、シクロホスファミド、中薬等の配合治療により浮腫が消退后,尿蛋白が+++~++++の間で持続している。
私の診立てで,初めは益気養陰,燥湿清熱の治療を一ケ月間続けたが,病に進退なし。
西薬を停止して観察したところ,一ケ月経っても,病情に変化なし。
脈証を再審すると,口干して渇き,尿黄赤,脈は弦渋で不調,別に苦しいところは無い,そこで栝蒌瞿麦丸加減を与えた。
処方: 天花粉・瞿麦4 山薬10 茯苓3 附子0.5
服薬3ケ月して,尿検査したら完全に正常だった。
但だ感冒后には,まだ微量の蛋白が出たが,此れは風熱のせいだから,疏風清熱剤6剤で愈えた。
耿××,男,25歳。慢性腎炎で二年以上になる。
中、西薬の治療を経た后,腹水、全身水腫は已に大部分は消失したが,時々下肢に軽度の浮腫があり,腰酸乏力,悪心嘔吐,腹満不適である。
其の証を細審すれば,面色皓白,舌苔白,舌質淡で暗,面微浮,脈虚大弦滑,尿蛋白++++などがある。
脈証を綜合すれば,脾腎倶虚,湿熱下注であるから,補気養陰,除湿清熱として,次の処方を与えた。
芪脈地黄湯加減(黄芪・生地5 党参・麦冬・五味子・当帰・山薬・茯苓・沢瀉・丹皮3 茅根・苡米10)
服薬して3剤の后,悪心嘔吐は消失し,浮腫、乏力、食欲不振,腰酸等の症も好転した。
方意を変えずに,上方を継服すること20剤で,浮腫は消失し,尿蛋白は++に減った,更に服薬2ケ月で,諸証は消失し,尿蛋白+に,更に連続服薬60剤の后,尿蛋白はそのままである。
脈が弦細渋であるので,瓜蒌瞿麦丸に改めて,30剤の后,尿は全部正常となった。
※殆ど無症状で尿蛋白だけがプラスである、頼りにするのはは脈診のみ。
脈診では脈弦細渋がもっとも多く見られると朱进忠先生は述べています。
脈弦者には,附子、肉桂を酌加する;脈渋者には,温陽の附子、肉桂,活血の益母草、桃仁、紅花,理気の青皮、陳皮を酌加する、との指示があります。

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