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脚癬(みずむし)2

 鄭××,女,50歳。両足の足縫が湿爛奇痒となり2年になる。医診では脚癬と。この数ケ月来次第に重くなっている。
先ず西薬治療を6~7日して,病情は反って更に重くなり,后に又中薬の燥湿止痒剤を外塗したが,湿爛奇痒の面積はあっという間に拡大した。
又某医では先ず加減三妙散を,后には加減萆薢滲湿湯を7~8剤服用したが,湿爛痒痛は拡大するばかり。
両足の趾縫、足蹠、足跟、足背の両側はみな痒痛湿爛しており,足全体が紅腫して地に触れられず,極めて臭穢であり,足心は熱痛して忍び難い,舌苔白く,舌質は淡,脈は沈細尺弱。
脈証を綜合して:湿爛の証とは湿熱であり,湿熱の証なら除湿清熱にて治せるはずなのに,効かないのは何故か?
《内経》に曽つて云わく:謹しんで病機を守り,其の部位を司っても,合うものと,合わないものがある。
此の病は足蹠に発っする,足蹠とは肝腎の主る所なり,湿爛の多くは湿熱に属するが,然し脈が沈細で尺弱,舌質が淡なら,腎気不足である。故に先ず補腎の必要がある。陽が復すれば湿は化して病は愈える。
 十味地黄湯(生地24 山薬12 五味子・茯苓・沢瀉・丹皮・附子・肉桂9 元参・麦冬15 車前子12 懐牛膝10)
服薬1剤で,両足の湿爛,紅腫痒痛はみな改善しはじめ,継服8剤で,愈えた。
 某医云わく:湿脚気は諸書ではみな脾胃の湿熱下注だと云い,主用するのは萆薢滲湿湯加減である,しかるに本証では無効だった;十味地黄湯は腎虚虚火上浮を治す処方である,今此の証に用いて効いたのは,何故ですか?
答え:湿熱の証に化湿清熱、燥湿清熱、利湿清熱を採用するのは,間違いなく正しい治療方法です,しかし湿熱の証には湿熱の邪による者と,正虚から湿熱が内生する者とがあります。若し湿熱の邪による者なら,其の湿熱の邪を除くべきです;若し正虚から湿熱が内生する者なら,扶正を以って邪を除かなければなりません。そうしないで若し湿熱者を扶正すれば必ずや邪気は更に熾しくなります,正虚者に祛邪を行えば必ずや正は傷つき邪は除かれません。補正を以って除邪湿法をするには,補腎と,補脾の別があります,若し腎虚に湿熱を兼ねれば,多くは陰陽倶虚である,故に十味地黄湯を以って補陰益陽,滋陰降火したのです。
   中医临证经验与方法 より
※寒変じて陽虚の熱となる。みずむしに対してさえも中医の理論は治療法を提供してくれる。

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脚癬(みずむし)1

 温××,女,50歳。両足の趾縫間に毎夏季には皮膚湿爛となり もう8年になる,今年の夏は更に重い。
医診は脚癬(みずむし)である。
先ず西薬治療を4日,湿爛奇痒は減らず,ますます厳重となる。
継いで又中医で,加減萆薢滲湿湯を内服し,除湿清熱の品を外塗したり洗ったりしたが,やはり反って厳重となった。
両足の趾縫、足蹠、足跟及び足弓部の皮膚はみな湿爛して奇臭あり,其の辺縁の皮膚は鮮紅で痒痛するため,昼夜とも入睡できず,身熱く,舌苔は白,質は紅,脈は滑数である。
足心とは,腎の所主也,足蹠が熱痛して紅赤なるは,腎陰の不足,火邪の内熾也。
脈滑数は,熱也。陰虚で火邪熾盛なるには,滋陰降火が宜しい。
 増液湯(元参30 生地15 麦冬10)
服薬1剤にして,湿爛、紅腫、痒痛はみな大いに減じた,継服6剤にして,愈ゆ。
 某医が問う:足癬湿爛に加減萆薢滲湿湯等の治療を3ケ月して更に甚しくなった,今はただ増液湯を7剤用いただけで瘳えたのは,何故ですか?
答え:足癬湿爛は湿熱の者が多い,故に多くは除湿清熱の方で治そうとするが,然し今は陰虚火熾であるから除湿すれば反って陰津を傷つけ火は更に熾盛となる,故に除かれずに反って甚しくなったのです。王冰は此の火は只壮水することでのみ制火できる,苦寒を以って降火すれば,煽り立てて助火となると云っています。病が劇しくなったのは前の処方が動にして静ならずだったからです。
   中医临证经验与方法 より
※標の湿熱にこだわり本の陰火を見ないと逆治になる。

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痒風(アトピー)

 駱××,女,10歳。1歳の頃からいつも皮膚に瘙痒があり,昼は軽く夜に劇しい,父母に掻抓してもらってやっと入睡できる。
多くの医院の皮科では皮膚瘙痒病(アトピー)と診断された。
前後して5年間の西薬治療と,3年間の中薬治療を受けて無効だった。
用いた薬物は西薬の外に,中薬だけでも800余剤に達する,然し毎回無効であるばかりか,却って瘙痒は倍加した。
皮膚には沢山の掻破した爪痕があり,皮膚は粗糙で,少し許り脱屑がある,元気が佳くない,舌苔薄白,脈沈細。
其の証を細思していた時、丁度居合わせた学生が問を発した:“なぜ夜間ばかりに奇痒があるのか? なぜ皮膚を掻破すると好転するのか?”
私はふと思い出して云った:“天人相応だよ。《素問·生気通天論》に云く:”陽気は,一日中 外を主る,明け方には人の気が生れ,日中には陽気が隆んになり,夕方には陽気は虚し,気門が閉じる。故に暮れれば収拒……。”《素問·金匱真言論》に云わく:”夜明けから日中は,天の陽,陽中の陽也。日中から黄昏までが,天の陽,陽中の陰也。合夜から鶏鳴までが,天の陰,陰中の陰也。鶏鳴から平旦までが,天の陰,陰中の陽也。故に人も亦之に応ずる。人の陰陽で言えば,外は陽,内は陰。陰血不足すれば,血燥生風となる痒とは泄風なり,掻抓すれば減ずる。”
治は養血活血,凉血散風に宜し。
 丹参銀翹飲加減(丹参15 銀花・連翹・当帰・白芍10 川芎6 薄荷3)
服薬6剤にして,其の痒は大いに減じた。
学生は又問うた:“医書に云わく:風は痒なりと,この方には僅かに薄荷一味しかないが,それで祛風しているのですか?”
答えて曰わく:“前用の諸方が無効だったのはそれです。風病には風薬で散風すべきだが,風薬は散風すると同時に,また傷血もする。本病は陰虚血燥であり,陰虚血燥の風は,養血潤燥して祛風すべきである,即ち血より透気して解するのです,若し気分の風薬を過用すれば,必ずや血中の燥熱は更に風を生じます,だから治風先治血を宗とし,血が行れば風は自ずから滅するのです。”
その后に継服24剤にして愈えた。
   中医临证经验与方法 より
※アトピーには治血を優先させなければならない!

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帯状疱疹8

これまでに帯状疱疹の記事を7回upしてきたので、この記事を帯状疱疹8とします。
 牛××,男,40歳。
右脇が疼痛忍び難く,疱疹が出てから4日になる。
医診は帯状疱疹。先ず西薬治療を3日して症状は減らない,継いで又中薬の清熱解毒剤を配用して1日するも亦効かず。
右側胸脇部に疱疹が連なり,肋間に沿って分布し,疼痛忍び難い,舌苔白,脈弦滑。
脈証を綜合すれば:胸脇とは,肝肺の主る所なり;脈弦滑とは,痰火鬱結なり。
治には宣肺理肝,解毒化痰するが宜し。
 (柴胡・枳実・桔梗・赤芍10 瓜蒌15 橘葉・青皮10 夏枯草30 連翹10)
同時加用:耳針圧痛点、外関,浅刺,留針2時間。
服薬2剤で,次の日には諸証は全て消え,愈えた。
某医が問う:昼夜兼進たったの2剤にして疹と痛みは退失したなんて,私は未だ聞いたことがありません,どうか其の理を明示してください。
答え:ただ解毒するだけでは疹が退いても疼痛が留って解しない事が多いのを経験しています,何故そうなるのかを考えるに:一に化痰をしていない,二に活血をしていないからです,今 疹と痛みが共に消えたのには,方中に化痰、活血の薬を具備していたからです。
   中医临证经验与方法 より
※帯状疱疹で後遺神経痛を出さない事が出来れば最高です。瓜蒌と赤芍がポイントですね。

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乳腺炎と温シップ

 商××,女,28歳。左乳房が紅腫疼痛して,発熱すること10日。医診では急性乳腺炎と。
先ず熱シップを続け、西薬治療も10日間受けたが重くなるばかり,その后も中薬の清熱解毒剤を配合されて更にひどくなった。
左乳房は紅腫疼痛し,高熱で,体温は39.9℃,舌苔黄白,脈滑数。
脈証を綜合すれば:薬と証は合っているのに,何故効かないのか?
たまたま《理瀹駢文》を読んで“外治の理は,即ち内治の理であり,外治の薬も,亦内治の薬である,異るのは,法のみ。”
《素問·至真要大論》には“熱者は之を寒す,寒者は之を熱す”の語があり,乃ち悟った:此れは熱シップを久用した誤りだ。
すぐに患者に熱シップを止めて冷水シップに変えさせた,1時間后には,熱が退き,腫れは減った。
5日の后に,腫れは消え,熱も退き,愈えた。
 某医云わく:諸医はみな熱シップを強調したのに先生は独り冷シップを主張したのは何故ですか?
答えて日く:乳癰の初起なら身熱は無く熱シップで消散できるし,若し紅腫がひどいか,或いは已に化膿しておれば冷シップで止められるが,しかし身熱熾盛ともなれば冷シップは必須となる,さもないと熱を営血に入らせたり或いは熱を心包に入らせるという危証をもたらしてしまう。
某医は又云わく:冷シップ、熱シップはどう違うのですか?
答えて曰く:健康な人なら,冷熱に差異はありませんが,若し正虚火熾だと,治法は異ります,たちまち変事が起こることを,仲景は次のように説いています:“火邪が微かでも,内攻する力は大きく,焦骨傷筋し,血は戻り難い。
   中医临证经验与方法 より
※民間療法として乳腺炎に温シップをすることはよく知られています。ただこれを施すのは初期だけで、長引いたものには逆効果になることがあります。
《傷寒論》116条、微数之脈,慎不可灸。因火為邪,則為煩逆,追虚逐実,血散脈中,火気雖微,内攻有力,焦骨傷筋,血難復也。

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四七湯

2017年10月18日のBSプレミアムで、偉人たちの健康診断「“養生訓”のススメ 江戸の健康名人・貝原益軒」というのが放送されていました。
そこで妻の東軒さんの服用していた処方に四七湯というのが出ていました。
解説者は更年期障害の薬だと云っていましたが、正確には七情の病を治す処方です。

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おでき・疖(せつ)3

鄭××,男,25歳。
面、頚、肩、臂に疖腫ができ,出たり引っ込んだりしてもう2ケ月になる。
先ず西薬治療を1ケ月して効かず,后に又中薬の清熱解毒剤を1ケ月近く配合したが,やはりあちこちから出てくる。
面、額、頚、項に数ケ紅棗大ほどの疖腫があり,其の中前額の2ケは已に破潰して膿が出ており,其の他の疖腫はみな紅腫疼痛し,且つ頭暈頭痛,煩躁易怒,小便黄,大便干,舌苔黄干,脈弦数である。
脈証を綜合すれば:弦数とは,肝胆実火である;舌苔黄干,大便秘結とは,陽明実熱である。合わせると,乃ち心肝胃火の為すところ。治は清肝瀉火に宜し。
当帰竜薈丸加減(川芎・当帰・防風・竜胆草・大黄10 元参15 羌活6)。又:牛黄解毒丸を水に溶かして局部に塗る。
6日間の薬で,疖腫は消失した。
 某医云わく:私が抗生素と中薬の清熱解毒剤を久用して効かなかったのに,先生が僅少量の清熱瀉火薬を用いると治ったのはどうしてですか?
答えて曰く:清熱解毒剤は疖腫を治すには有効な方法の一つです,然し疖の多くは火です,火邪は瀉さなければなりません,ただ解毒しただけでは効きません、これが一つ;火には臓腑経絡の別があります,若し妄りに瀉火を施しても,臓腑を分けなければ,いくら解毒しても効きません、これが二つ;治火に下剤を用いる,通便瀉火が無ければ,いくら解毒しても効きません、これが三つ。
三者が倶備すれば,効かない訳が無いでしょう? 
今私が用いた少量の解毒薬が効いたのは,一つには瀉火があり,二つには経絡臓腑の分があり,三つには通下大便があるからです。
   中医临证经验与方法 より
※実火はまさに瀉すべし。火邪と毒邪は違うのか!

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おでき・疖(せつ)2

文××,男,55歳。
頭項部に疖腫ができ,あちこちに3~4から7~8ケが出たり引っ込んだりしてもう2年になる。
先ず西薬を1年以上用いて治療したが効かず,后で又中薬の清熱解毒剤を8ケ月も配合してもらったがやはり効かなかった。
疖腫が項部にあると共に,頭暈頭重もあり,時には眩暈のあまり立っていられず,悪心嘔吐し,且つ日毎に健忘と乏力になり,神情は呆癡のごとく,食欲は減り,舌苔白く,脈は濡緩である。
脈証を綜合すれば:脈濡緩で,且つ久病不愈なら,気陰両虚,痰鬱気結,鬱而化火である。治は補気養陰,理気化痰が宜しい。
 十味温胆湯加減(黄芪15 当帰・麦冬・党参・五味子・竹茹・枳実・半夏・陳皮・茯苓・甘草・菖蒲・遠志・生地10)
服薬4剤にして,ただ頭暈頭重,神疲乏力,健忘失眠,納呆食減は倶に減っただけでなく,疖腫も亦明らかに改善した,継服10剤もすると,疖腫は全部消失し,他の症も亦七八割方減った,又服すること25剤で,諸証は全て消えた。
 某医云わく:諸書はみな疖腫は火毒だという,若し病久しく愈えざる者は気血倶虚が本で,熱毒は標だと云う。然し先用した抗生素,清熱解毒の方薬が効かないのなら,后用の補気養血,清熱解毒も同じく無効なのではないか?
答えて曰く:本病を脈証から看ると,一方では気陰倶虚があり,一方では痰鬱火毒がある,前用した治火の諸方には化痰理気,補気養陰がない;気陰倶虚者を治すのに,理気化痰がなくては,鬱火は解けない,ただ清降だけでは,何が散らせるのかね?
   中医临证经验与方法 より
※虚証では清熱解毒だけでは効果が出ない。補気養陰や理気化痰の薬が熱毒を解す役割を担う。

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おでき・疖(せつ)1

劉××,男,18歳。
2ケ月前から頚項部に疖腫ができた。
少い時は4~5ケ,多い時は7~8ケ,上に黄白色の膿頭があり,基底は硬く根がある。
前医はペニシリン類の薬物と中薬の清熱解毒剤を用いたが,療効はなかった。
脈証には特に変わったところは無かった。
こここで《難経》の言葉を思い出します:“春夏は浅く刺し,秋冬は深く刺すというのは,なぜか? はい,春夏には陽気が上に在り,人の気も亦上に在る,故に浅く取らなければなりません,秋冬には,陽気は下に在り,人の気も亦下に在る,故に深く取らなければなりません。”
太陽経は,人身の大表にして,其の経は項を絡う,だから太陽経穴の血を取るのが宜しい。
急ぎ委中から放血させて治したら,一回で愈えた。
 某医云わく:委中を取り放血させたら疖腫が治ったが何故このように効くのか?
 答えて曰く:春夏は陽気が上の方の表に在る,前用の薬はみな下の方の裏を治すものばかりだった,病はそこには無い,故に治らなかった。委中の穴とは,太陽経の合穴で能く表を主り上を主る,又能く凉血瀉熱し,活血逐瘀する,故に其の穴位を取って放血させたのである。
   中医临证经验与方法 より
※ペニシリンや中薬の清熱解毒剤が下部の裏に行くというのは面白い。

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脳梗塞で意識不明

 董××,男,70歳。
意識を失い口も利けなくなって3ケ月。医診では脳血栓症と。
先ず西薬治療を20日して効無し,継いで又中薬の安宮牛黄丸、至宝丹を2ケ月飲ませたがやはり効無し。
症状は神昏不語,眼をつむり口を閉じ,いびきをかき,手足はふにゃふにゃ,二便を漏らし,舌苔は黄白で厚膩,脈は虚大弦滑。
目と口を閉じ,鼾をかき,二便自遺で,脈が虚大なのは,正気の大虚にして,五臓が絶えようとしている。
脈が弦滑なのは,まだ陽気があり,痰熱蒙蔽になっていることだ。
綜合すると五臓欲絶だが陽気があるから回復の機はある,ただ痰湿の邪気が阻鬱しているだけだ。
治療としては気陰を大補して扶正回元し,少し化痰開竅で其の邪を除いて佐けよう。(扶正祛邪)
処方:黄芪15 当帰・人参・麦冬・五味子・竹茹・枳殻・半夏・陳皮・茯苓・甘草・菖蒲・遠志10 知母6
連続して服薬すること15剤で,意識が少し戻り,時々眼を開き,口を開いて大小便をしたいと云うようになった。
此の時に某医は薬効の緩慢なのを嫌い,さらに安宮牛黄丸を毎日2丸づつ服ませたところ,2日后に意識が無くなり,大便を失禁するようになった。
私が会診して云く:此れは五臓大衰の候である,何故 克伐の薬などを飲ませたのか。すぐに安宮牛黄丸を去り、前の処方から知母を抜いた。
服薬すること15剤にして,意識が戻った。
   中医临证经验与方法 より
※同じような状態の親戚を看取ったことがある。その時には何もしてあげられなかったが、こんな方法があったとは。
また中風に牛黄製剤を奨める古くからの伝承にも、それは「克伐の薬」だから使う時を選べと忠告している。

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早朝頭痛

 蘇××,女,30歳。左側の偏頭痛で3年。医診では血管性頭痛。
先ず西薬治で不効,后に又中薬の平肝瀉火、祛風散寒、養血活血、針灸治にても,亦無功。
頭痛は突発性で,引き裂くか,錐で刺されるかのようで,同時に悪心嘔吐や吐瀉を伴う。
頭痛にははっきりした時間性があり,毎回発病するのは早晨起床の后で,午前10時前後になると緩解する,この情況が2~3日連続した后,最後には極度の疲乏と嗜睡がきて,時には連続して3~4日も眠る,食べることも,飲むこともしない,嗜睡が終わった后,又絶え間のない隠痛が2~3日始まり,再び突然の劇痛が数回あって,ようやく頭痛が消失する。
この発作は,初めは半年に一回ほどだったが,近年は,殆ど平均して一ケ月に一回ほどで,毎回少なくとも7日,多ければ半月も続く。
此度の発病と前回の発病とは僅か一周しか隔たっていない,此の半年は,まるで仕事が出来ない。
舌苔白く,脈は弦大にして緊,右は左よりも大きい。
脈証を綜合すれば,気血倶虚が本で,風寒外客が標である。
治は益気養血,疏風散寒とする。
 補中益気湯(黄芪15 升麻・柴胡・白朮・人参・当帰・羌活10 甘草6)
某医云わく:此のように劇しい病なのに,補中益気湯ぐらいで治せますか?
答えて日く:此の病は毎日早晨に起きる,早晨とは,《内経》では朝と称するが,卯辰の時(午前6時~8時)である,此の時は陽気初生の時で,陽虚挾鬱者は,升発不利となる,故に疼痛が大きい,午後に陽気が盛んになると痛みが減るのは,陰陽が相対的に平衡となる為です,此の証はただ補うだけで解することが出来るが,補中に升散薬を佐とする事が必須です,故に補中益気で治るのです。
又云く:疼痛が此のように劇しいのに,どうして蜈蚣、全蝎を用いないのか?
答えて曰く:風寒閉鬱,陽気閉鬱には,やはり散風升陽の薬味が好い,羌活を加えるだけでよく、蜈蚣、全蝎は用いない。
東垣の著を見てください,羌活、防風、白芷、細辛、独活を用いるだけで,蜈蚣、全蝎は用いていません。
服薬すること4剤で,頭痛は頓になくなり,其の后又服すること40剤で,すっかり愈えた。
   中医临证经验与方法 より
※天人相応が人体に現れている。

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肺炎4

 衛××,男,42歳。8日前に突然42℃の高熱が出た。
某院で肺炎と診断され、先ずペニシリン、ストレプトマイシン、アンピシリン、エリスロマイシン、先鋒黴素Ⅱ、先鋒黴素Ⅳ、先鋒必、アミノチオフェンで5日間治療したが,体温は下降しなかった,継いでまたステロイドホルモンや中薬の清熱解毒剤を配合して3日間治療したが,やはり体温は依然として改善せず。
体温は40.3℃だが,時に脇から上に向って冷気が逆上してくるのが感じられ,舌苔白,脈は沈弦滑数である。
弦脈とは,少陽である;滑数とは,痰火膠結である。
ゆえに和解少陽,化痰瀉火にて治療するのが宜しい。
処方:(柴胡30 黄芩・生姜10 大棗12个 瓜蒌30)
某医云く:薬は僅か3味しかないのに,果たして効きますかね。
答えて曰く:前の方は銀花100,連翹50,生石膏250を用い,また抗生物質を加えても効かなかったのです,恐らく薬力の大小ではなく,方法が間違っていたのでしょう。今病は少陽に在りますから,枢機を和解すべきです,逆に陽気を冰鬱させて,陽気鬱となれば,熱は除かれません。東垣云く:熱鬱、火鬱には,必ず発する処方でなければならない,故に升陽散火湯を挙げて大熱を解しています。更にいえば升陽散火の薬味,薬量よりも少ないゆえ,却って神効があるでしょう。《傷寒論》云く:胸中煩するなら,人参、半夏を去ると,此の病の脈は弦,滑で,おまけに冷気上冲がある,故に此の五薬だけで治すのです。
服薬1剤で,4時間后には,微汗が出て,熱は体温36.8℃まで退いた,再服1剤で,脈は滑から弦に転じた,そこで柴胡湯2剤を服して癒えた。
某医云く、消炎薬を用いないで肺の炎症が速やかに消退するなんて,未だ聞いたことがない。
答えて曰く:炎症とは現代医学の説です,中医では炎症に如何に対待しているか,如何に処理しているか,そこは研究すべき問題です。炎症とは熱毒であるとするのは,正確ではないと思っています。此の症が効かなかったのは此こにあります。
   中医临证经验与方法 より
※炎症にこだわり,抗菌,解毒するばかりでは,少陽は解しない。
升陽散火湯(升麻・葛根・独活・羌活・白芍・人参5 炙甘草・柴胡3 防風2.5 甘草2)

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肺炎3

支××,女,35歳。春節を過ぎる頃,突然 発熱咳嗽となった。
医師は抗生剤、ワクチンによる治療を進め,発熱はすぐに無くなったが,咳嗽は反って劇しくなり,時には連続して止まらず,平臥ができない。
ついに某院で入院治療となり、気管支肺炎とのこと。
医師は先ず多種の抗生剤と止咳化痰薬を用いて5ケ月以上も治療をしたが効かず,更にまた中薬の宣肺止咳、清熱解毒の配合剤を用いて1ケ月以上も治療したが依然として療効なし。
経済的困難のため,やむを得ず退院した。
突発的な劇しい咳嗽で,平臥ができず,胸満胸痛,頭暈頭痛,口苦咽干,不欲飲食,舌苔薄白,脈は弦細渋である。
外感病で脈弦になるのは少陽の枢機不利である;渋は,寒であり,滞である。
この証は邪が少陽に在って,寒飲蘊肺の証である。
よって小柴胡湯加減にて枢機を和し;干姜、五味子、紫菀で肺飲を化し,咳嗽を止めよう。
小柴胡湯加減(柴胡・半夏・黄芩・五味子・絲瓜絡・紫菀10 干姜4)
服薬4剤で,諸証はみな減り,継服15剤で,諸証は消失して治った。
某医云く:炎症に清熱解毒剤を用いないで消炎し,反対に干姜という温熱薬を用いたのは,解りかねますが?
余云く:中医と西医は異なる理論体系です,西医の理論で無理やり中医的治療をしてはなりません。本証は中医的には邪在少陽だから和解すべきで,寒飲阻肺だから温肺化飲をしたのです。
   中医临证经验与方法 より
※寒飲阻肺,枢機不利に対して化飲をせず,反対に清熱したのは寒を以って寒を治す事になり病情は悪化した。

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肺炎2

 鄭××,男,50歳。咳嗽発熱して2ケ月以上になる。某院では肺炎と診断された。
先ずペニシリン、アンピシリン等の治療を1ケ月以上受けて,発熱,咳嗽気短は明らかに改善したが,1ケ月経っても症状はなお残り軽減しなくなった,数回の胸部X線検査でも影が縮小していない,又某医が養陰清熱,化痰止咳の中薬を以って治そうとして,10剤ほど使ったが,諸証は減らなかった。
症状は咳嗽吐痰に,疲乏無力,午后から熱が高くなる,食欲不振,舌苔薄白,脈虚大弦滑にして渋。
脈虚大は気陰倶虚である;弦は肝であり,木火凌金になっている;滑は痰であり,渋は滞であり寒である。
これを綜合すれば,気陰倶虚,痰熱蘊肺,木鬱化火,陽気不化の証である。
補気養陰を以って培本し,化痰清熱,理気温陽を以って標を治すのが宜しい。
処方:(黄芪15 地骨皮・秦艽・紫菀・党参・茯苓・柴胡・半夏・知母・生地・麦冬・桂枝・甘草・桔梗10 桑皮10)
服薬6剤の后,諸証は消失した,継服すること3剤にして,胸部x線で陰影は消失した。
某医が問う:本病は肺炎に違いなく,抗生剤と中薬の清熱解毒剤で一旦は炎症が消失したのに,どうして完全には治らなかったのか?
答えて曰く:炎症なら本来は消炎薬で治療されるはずなのに,長くかかっても治らなかったのは,きっと正気不足だったからでしょう,正虚者は養陰するだけでは治らない,気虚を挾んでいるから,補気養陰により扶正をし,化痰清熱,理気通陽したので癒えたのです。
   中医临证经验与方法 より
※気陰倶虚,痰熱内鬱なのに,養陰益気をせず,清熱解毒ばかりしていたから治らなかった。中医の扶正の考え方を取り入れてほしい。

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肺炎1

 黎××,女,成。咳嗽胸満が一ケ月以上続き、肺炎と診断された。
初めは抗生剤を使ったが無効だった,その后 辛凉解表、清熱解毒、宣肺止咳の中薬治療を20日以上やったがやはり効果なし。
咳嗽のほかに,胸満胸痛,疲乏無力,口鼻発干するが渇せず,体温37.7℃,舌苔薄白,脈沈緩稍弦。
病は秋季に発し,脈沈緩で弦,且つ寒凉剤を久用して効かなかったことを考えなければならない。
秋燥凉邪が肺を犯せば,肺気不宣,寒飲内生となり,且つ気鬱を兼ねるだろう。
因って辛潤化痰,理気止咳とする。
杏蘇散加減(紫蘇・陳皮・枳殻・前胡・半夏・木香・甘草・桔梗・茯苓・紫菀10 葛根15)
服薬2剤で,咳嗽はすぐに減り,継服10剤で諸証は消失した。
X線検査で心肺膈は正常となっていた。
某医云く:麻杏石甘湯が効かずに,非消炎薬が有効だったとは?
答えて云く:肺炎は肺熱者が多いけれど,寒飲阻肺の者もいます。本証の脈証は寒、鬱、飲証の合邪に一致していたので,辛温、化飲、理気の合法を用いて愈えたのです。
   中医临证经验与方法 より
※肺炎と聞けば抗生物質や麻杏甘石湯のような辛凉清熱剤を第一に思いつきやすいが、秋の凉燥という季節性を忘れてはならない。先ず辛温剤を投与すべきだったのに誤って清熱解毒をしたところ、寒邪閉鬱となり内飲が生じて久治するも癒えなくなったのである。

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春秋定例の感冒

孫××,女,40歳。
七、八年来,毎年春秋の二シーズンに決まって感冒にかかり,軽ければ五六日のを一回,重ければ二三日のを一回,毎回感冒の后で慌てて服薬して七八日かかって漸く緩解する。
最近二年余りは病情が次第に重くなり,中薬を用いて疏風解表、補気固表すること数百剤,西薬の胎盤グロブリンを五本,それでもはっきりとした改善は無い。
症状は頭暈乏力,時時噴嚏,口苦口干,食欲不振,心煩,口苦,舌苔薄白,脈弦緩である。
脈証を綜合し,諸医が与えた薬効と結びつけて,反復思考するに,少陽は胆に属し,胆は諸臓の主である,肝胆は互いに表裏を為す,肝胆の気が鬱結すれば,少陽春升の気は不安となり肺金に反克する,故に春秋二季に衛気不固となり外邪に感じ易くなる。
治には和解少陽,プラス調営衛が宜しい,柴胡桂枝湯加減を処方した。
 処方:柴胡・半夏・黄芩・党参・灸甘草・桂枝・白芍10 生姜3片 大棗7个
服薬三剤にして,諸証は消失した,其の后また毎年の春,秋二季には各々三剤を服薬することにし,三年もすると,中薬数剤で治るようになった。
   难病奇治 より
※柴胡桂枝湯は数日間飲めば良いのであり、安易に体質改善の目的で長く飲むものではない。

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