宗気外泄
《素問・平人気象論》に「胃之大絡、名目虚裏、貫隔絡肺、出于左乳下、其動応衣、脈宗気也」という記載がある。
左乳下の心臓の鼓動が触れるところを“虚裏”と名付け、そこへは胃の大絡という胃から他の経に通ずる道が通っているので胃気や気血の流れが反映される重要なポイントです。
西洋医学では心拍の現れる所としか見ていませんが、東洋医学では単なる心拍ではなくて、そこには“宗気”という気の大本となる気の流れが表出していると考えます。
この虚裏の拍動が微かなら宗気が虚しており、反対に衣服が動くほどだと宗気外泄で、大事な“宗気”が外へ漏れていると見なします。
『李可老中医急危重症疑難病』の症例にも「心動震衣,宗気外泄」という表現で危急状態にあることを示しています。
胃気は宗気の一部です、宗気外泄が過ぎると胃気も衰えます。
葉天士の《臨証指南医案・不食》には次のように云っています。
“胃気有れば生き,胃気無ければ死す,此れは百病の大綱なり。故に諸病で若し食欲があれば,病勢が重くても救える;食欲が無ければ,病勢が軽くても必ず長引き悪化する。”
宗気や胃気が如何に重要か、それを虚裏から伺うのが東洋医学なのです。
こんな深い意味を読み取る人は「東洋医学は哲学だ」というのですね。
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