老年性認知症
張某某,男,71歳,干部,河北人。1996年12月13日初診。
患者は2年前から次第に神識呆滞となり,記憶力が減退し,緘黙で喋らず,読み書きができなくなった。
某医院の脳CTスキャンでは大脳に広汎性萎縮が認められ,老年性癡呆(Alzheimer病)と診断された。
脳復康、維脳路通等を服したが効果は顕れなかった。
現在は神識呆滞,寡言少語,嗜睡懶動,食少納呆,大便溏,行動遅緩,失認失写,面色黄白,老年斑累累,舌淡紅苔薄白,脈沈細尺弱。
この証は脾胃虚衰,化源不足,腎精虧損,髄海空虚,脳失所養の候である。
そこで滋脾養胃,補腎填精のため,理脾陰方の加減方を与えた。
(薬用人参15 山薬20 熟地15 黄芪20 蓮肉・白芍・扁豆・茯苓・山萸肉・橘紅15 甘草10 紫河車(別包,研末,毎次2g,湯薬冲服))
3ケ月の治療で,神呆の面容は基本的に消失し,表情は元へ戻り,受け答えの言葉も正確となり,読み書きが出来るようになり,食欲は増加し,大便も正常となった,舌は淡で無苔,脈は沈細で尺弱である。
原方の白芍を赤芍に易え,別に丹参20gを加えて,続服すること3ケ月。
神志はあたかも常人の如く,記憶力は増強し,反応は以前のように霊敏となり,目下なお治療中である。
・
[評析]脾胃は后天の本,気血生化の源である。
人は生れてより老いるまで,后天に頼らざるを得ず,肉体はすべて脾胃の資するところである。
老年ともなり,腎精が虧損し,髄海が不足すれば,后天培養の力によらざれば,五臓を溢栄し,気血を旺盛とし,精髄を充足し,祛病延年することはできない,故に脾胃を調理することは老年病治療の関鍵であり,また老年性癡呆を防治し、延緩衰老の重要な方法である。
本例の辨証は脾腎気陰両虚である,故に参苓白朮散と六味地黄湯の意を取り,滋補脾腎,両調気血して,満足な療効を得た。
※1 理脾陰煎《雑症会心録》(南沙参・白朮6 茯苓3 山薬4.5 白扁豆6 陳皮3 甘草1.5 茵陳0.6 梔子1.5 白芍3 苡仁・谷芽9)主治陽黄。
※2 これなら平易な処方で誰にでも出来そうだ。
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