胸悶-桂枝去芍薬湯
劉渡舟医案:李某某,女,46歳。
心筋炎で入院治療中,いつも夜になると胸中が憋悶(胸痺の軽症)して忍び難く,呼吸困難になり,酸素吸入をしてようやく緩解する。
舌質淡で苔白く,脈は弦緩である。
胸陽不振,陰気内阻の証と辨じられる。
桂枝・生姜10,大棗12枚,炙甘草6。
服薬2剤の后 症状は軽減した,原方に附子6gを加え,再服すること3剤の后に癒えた。[《経方臨証指南》1993:5—6]
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按語:胸悶または胸痛は,胸痺の主症である,其の病機は上焦の心胸の陽気虚弱により陰寒の気が内盛となったことである。
《金匱要略》に云わく:“陽微陰弦なれば,即ち胸痺にして痛む。“
胸は陽位にして天空に似る,心肺の二臓が其の内に居り,営衛の二気はここより宣発される。
如し胸陽不振で,陰寒内凝となれば,陽気は布達されず痺阻となり,心肺の気血は不暢となる。
故に胸痺の症状が,軽ければ胸中満悶となり,重ければ疼痛を現すが,桂枝去芍薬湯にて治療すればかなりの好い療効を得る。
伤寒名医验案精选 より
※桂枝去芍薬湯については既に解説してある。ここは桂枝湯ではダメで、どうしても「去芍薬湯」でなくてはならない。
また心筋炎のように重大な疾患がこのように簡単な処方で対処できるとは驚きです。
これに似た私の不思議な体験については「陽明病としての呉茱萸湯証」にメモってありますが、あれは心筋炎の症状だったかも知れない。
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