呃逆ー桂枝加桂湯
宋建中医案:常某,男,51歳,1986年2月28日初診。
五年前に胃脘が脹悶してすっきりせず,隠隠として痛み,食欲不振となり,某医院では慢性胃炎と診断され,治療后に病情は好転した。
ここ二ケ月来,胃脘が時々おかしかったが,半月前に又冷やしたら呃逆が現れ,それが日増しに劇しくなり,腹脹を伴い,食欲不振で,体がだるい。
これまでに多方面の治療を求め,中西薬と変えてみたが,効果はなかった。
ここ両日は呃逆頻発となったのでやって来ました。
カルテ:証は上述の如く,呃逆が頻発しており,音声は低微で,面黄体痩,舌淡苔薄白,脈は沈遅無力である。
脾胃虚弱,寒邪侵襲,胃気上逆の証である。
補脾胃,去寒邪,降逆気として,桂枝加桂湯加味を用いる:
桂枝20,白芍、党参15,甘草6,干姜、生姜9,大棗7枚。
服薬2剤の后,呃逆の回数は明らかに減少し,腹脹、食欲不振も好転した。
又服すること2剤で,呃逆は消失した。
上方の桂枝は9gに減らし,再進3剤にて愈え,その後再発していない。[新中医 1991,(5):45]
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按語:胃病を久しく患っていたから,脾胃は已に虚している,そこへ又寒邪が直中し,脾胃不和となり,冲気が上逆して呃逆を発した。
桂枝湯は外では営衛を和し,内では脾胃を調えることが出来る。
桂枝を加えたのは,“其の味甘が,善く脾胃を調え,脾の気陥を上升させ,冲気の逆を下降させる為である,脾胃が調和すれば,留飲は自ら除かれ,積食は自ら化す”(《医学哀中参西録》)。
又党参、干姜を加えて脾胃を温補させ,陽が復し寒が去るのを待てば,脾胃は調和して,呃逆は自ら除かれる。
伤寒名医验案精选 より
※桂枝加桂湯は《傷寒論》では気が少腹より上って心を衝く“奔豚病”に使われており、呃逆も同じとみなされる。
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