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抑鬱一真武湯

和貴章医案:1969年 余が四川の自貢へ行ったとき,一人の女子がありました,
34歳で,夫が病没して,悲痛のため死ぬほどでした,
食事は咽を通らず,久しくして頭暈目眩を発し,家中に休息して半年有余になります。
現症:昏旋して倒れんと欲し,臥していても床は揺れ物が動き,筋惕肉瞤(ピクピクする)し,耳鳴りて聞こえにくく,静を喜び声響を聞くを悪み,心煩して怒り易く,脇肋は脹痛し,食欲不振で腹が脹る,
口は渇せず,月経は不正常で,経色は暗く質は稠,二便は調っている。
愁苦の面容で,両顴は紅い,苔白く稍厚く質は紅い,脈弦。
これは情志所傷による発病で,脈証から肝鬱になり,肝陽が上亢し,上っては清竅(首から上の目・耳・脳など)を擾し,下っては冲任を乱し,中にては脾胃を横逆している,
肝鬱より治さなければ効を取り難い。
景嶽が言ったことを憶い出す“憂鬱を病む者は,全て大虚による,本より実邪は無い。“
此れは正に憂鬱の病は,虚に属すと分かります。
《内経》に説く:“悲しめば気は消える。“
消沈の気が久しくなれば脾に及び腎を損する,故に頭暈目眩,筋惕肉瞤,昏揺して地に仆れんと欲し、食欲がなくなる。
悲しみが長いと,精気は消失し,陰耗陽浮となり顴紅が現れます。
再三思索して,真武湯(白朮・茯苓10  白芍8 附子2 生姜1)にて治すべきと,脾腎を兼顧して,三ケ月間治療して健康が回復した。
按語:情志の病は,総て心病が気に及んで,多くは鬱病となる。
鬱証には三者がある:一つは怒鬱,二つは思鬱,三つは憂鬱である。
鬱者には解鬱順気をと,一般に実邪から論治されるが,然し臨床では皆 桴鼓の如く(太鼓とばち)はいかない。
本案の憂鬱病は,親眷属が亡くなり,悲しみは淒淒,情は切切として,利害は相い牽き;お茶も飲まなければ,飯も食べず,神迷魂乱となっている。
悲憂が深ければ,損すること深く,脾腎が傷れるは,必然の所である。
ゆえに解鬱順気にて治すことは出来ない,治法を更えて脾胃よりすれば捷効を獲るだろう。
真武湯は確かに脾腎を益することによって気化を助ける良方であり,本方は水があれば行らすし,水が無ければ斂陰益気温陽となる。
※身振揺という症状は《傷寒論》の条文の「心下悸,頭眩,身瞤動,振振欲擗地者,真武湯主之。」にあります。
これは回転性の眩暈(横揺れ)ではなく、浮遊性のめまい(縦揺れ)と思われます。

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