嘔吐一調胃承気湯
王常勇医案:万某某,女,23歳。
長期の低熱と,胸痛咳嗽に因り本院の肺科に入り,肺結核と診断され,臨床治療を経て病情は好転した。
だが五日前から嘔吐が始まり,次第に重くなり,一日に数回,食が入ると吐き,食も水も入らない,西薬の鎮静、止吐等はみな無効で,中医の診治が要求された。
1984年4月28日の診察では:精神不振,消痩乏力,面色潮紅,発熱,不思飲食,頻りに嘔悪を発し,食が入るとすぐに吐く。
嘔吐が始まってから,今に至るまで六七日間も大便が出ていない,舌質は紅く,苔は微黄で膩,脈は弦細数。
此れは久病による体虚と,内熱による傷陰と,中焦の熱結のため,腑気が不通となり,胃気が降らず,濁気が上逆したものである。
治は通腑降逆に宜しく,調胃承気湯加当帰を投ず:
大黄1O(后下),芒硝1O(冲服),甘草15,当帰15,一剤,水煎して少量ずつ頻服する。
患者は睡前に完服したが,服薬の間に嘔吐はなく,一夜安らかで,次の日の清晨に,稀軟便が一回出て,胃脘が舒適するのを感じた,
身熱も亦退き,口干と微渇があり,朝食に稀飯半碗が進み,少量の水を飲み,その后ずーっと嘔吐をしていない。[黒竜江中医薬 1986,(4):49]
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按語:本案の嘔吐は腑気不通により,胃気が上逆したものである,
“六腑は通るを以って用となす”,故に通下の法を採用した,いわゆる“病が上に在れば下に取る”也。
患者は久病により陰虚の体であるから,中焦に津虧熱結があっても,大下してはならない,故に調胃承気湯加当帰を以って,補陰養血扶正し,潤腸緩下して邪を去った。
少量ずつ頻服させたのは,胃気の恢復を待つためで,ステップ by ステップで,熱は下るに随って除かれ,気は通るに随って降り,逆停嘔止の効果となった。
伤寒名医验案精选 より
※胃気の恢復を待つために調胃承気湯を少量ずつ頻服するのは覚えておきたいテクニック。
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