熱入血室一桃仁承気湯
陳正昭医案:李某某,女,28歳。
春三月経水来ること多し,八日目には止るはずだった,
ところが烈日に摘茶していたら,忽然として小腹が急痛し,それが心膈へと上冲し,寒熱往来となった。
喜嘔し,薬も口に入らず,手足は厥冷し,気閉神昏となった。
医は附子五積散加減等の方で治そうとしたが効かず,回りまわって余が診ることになった。
脈象は沈伏,舌苔黄,質暗紅。
此の病は経水が八日目になっても止まらなかったのを,医者は虚と判断して治そうとした,
どうして熱邪が虚に乗じて血室に内入したことが分からなかったのか。
仲景は熱入血室の治に小柴胡の法を当てたが,小柴胡は和解の方であり,今は熱邪の勢が急ゆえ,急攻する必用がある。
況んや血海は陽明の下にある,少陽が来路なら,陽明を去路としなければならない。
泄熱逐瘀に宜しく,桃仁承気湯を処方する。
桃仁12,桂枝6,大黄12,芒硝6,炙草6。
連服すること3剤,厥は回し嘔は平となり,黒物を糞下し,痛みは緩み神は清となった。
まだ肚腹脹大があるので小柴胡湯加山楂、益母草、当帰、川芎、広皮、厚朴、云連を改進し,両周にして全安となった。
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按語:桃仁承気湯で熱入血室の実証を治すのは,確かに新解釈であり,更に一歩の検討が待たれる。
伤寒名医验案精选 より
※小柴胡湯にて熱入血室を治す法とは、下陥した熱を血室から少陽へ上げ、更にそれを太陽へと上げて排出するもの。《傷寒論》では熱入血室を治すのは小柴胡湯だが、更に桃仁承気湯でもあり得るということ。
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