咳(咯)血一猪苓湯
厳忠医案:呉某某,女,38歳,1985年1O月1日診。
素もと咯血の病史があった。
二日前に隣家と口角反目(喧嘩)して頻繁に咯血した,
昼夜碗に盈ちるほどで,色紫で塊があり,形痩せ脇痛を伴い,面黒く神疲,月経は40日経っても来潮せず。
検査:心肺(一),体温37℃,苔少舌質紫,
治は利水化瘀,清火寧血法に宜し。
猪苓湯加味:赤猪苓・阿膠1O 沢瀉5 滑石30 水蛭・大黄・黄芩・炒山梔1O 白茅根30。
進薬3帖で,咯血は止り,服完5帖で,痊愈を欣告した。[江西中医薬 1989,(4):24]
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按語:咳血はまた咯血とも曰い,咳する時に血を咯出したり,痰中帯血となったり,鮮紅血のみで,泡沫を夾んだりする。
本証に猪苓湯で治療した,渊源は唐容川の《血証論》ある。
唐氏は《血証論・咯血》の中で,“腎気が下行すると水は膀胱に出るのだが,腎経が膀胱へ気化しなければ,膀胱への水は上行して痰となる。膀胱は,胞の室でもあり,膀胱の水は,火に随って上沸し,胞血を引動して上げると,水病が血病を兼ねることになる。“
咳血の病理機転を指摘し,又次のようにも説いている:“此の論は古えより未だ言及されていないが,予が《傷寒論》から悟出したのは,千慮の上の一得で,秘してはおけない,医者が此れを知れば,治咯の法を知り,治痰の源を知るだろう。仲景の猪苓湯は膀胱の水を化すと同時に,滋血をも兼ねるゆえ,最も合法的である。“
本案の咳血病は暴怒から起り,肝火の鴟張(傲慢)が,下の腎陰を劫かし,膀胱に対して腎気不化をもたらし,胞血上行を惹動した故である。
故に猪苓湯で滋腎し以って膀胱の水熱を瀉せば,熱は小便に随って去ると同時に,血は自から下行して胞に入り,咳血は自から愈える,此れが上病は下に取るの謂也。
唐氏の論は,非現実的だが,臨床的には実際よく符合する。
伤寒名医验案精选 より
※「上病は下に取る」の一例か?
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