重症筋無力-益気聡明湯
史××,男,34歳。
両眼瞼が下垂して持ち上げることが出来ず、もう8ケ月以上になる。
医診では重症筋無力症とのこと。
先ず西薬治療にて一度は好転したが,停薬するとすぐに持ち上げられなくなる,
続いて又中薬の補中益気湯加減を配合して治療すること5ケ月になるが,症状は未だ改善されない。
細かく其の証を詢ねると,両眼の瞼下垂が視力に影響している外に,頭身困重を感じ,疲乏して眠い,舌苔は黄白で稍膩,脈は濡緩。
脈証を綜合して,思うに:全身困重して,眼瞼が持ち上げられないのは,脾湿が標で,気虚が本である。
治には益気升陽,除湿清熱するのが宜しい。
益気聡明湯(蔓荊子・升麻10 葛根15 党参10 黄芪15 黄柏・白芍・炙甘草10)
服薬10剤で,愈ゆ。
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某医云わく:既に気虚と云い,補中益気湯を用いたのにどうして効かなかったのか?
答えて曰く:本証は但だの気虚には非ず,湿熱を挾んでいる,故に但だ補中益気を用いて補気するだけでは無功である。
又問う:益気聡明湯は,東垣の聡耳明目方なのに,どうして重症筋無力に用いるのか?
答えて曰く:眼瞼は,脾の主る所なり,益気聡明湯は,既に益気し,又升陽し,又除湿する,故に用いるのだ。
朱進忠 中医臨証経験与方法 より
※本証のほかに挾証を兼ねると、双方に効かせなければならない。
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