春温の傷風
春温治案七則-5
傷風にかかり,頭痛発熱し,盗汗が微かに出て,風に当たるのを畏れた,人は太陽の傷寒と謂うが,誰も春温の傷風であり,傷寒に非ざるを知らない。
頭痛は太陽に属す,然し風は脳に入っても,頭痛を作す,身熱頭痛すれば便ち太陽症と謂うことは出来ない。
風は皮毛より入る,肺は皮毛を主り,肺は鼻に通じ,鼻は脳に通ずる,風が肺に入れば,自ら能く風を引いて脳に入り頭痛を作す。
肺気が旺んであれば,腠理は自ら密となる,だが皮毛が疏であれば,風は容易に入る事が出来る。
肺気が虚であれば,風は襲い易く,邪正が相い斗う,故に発熱する。
しかし肺気が虚だと,邪に敵対することが出来ない,ゆえに盗汗が微かに出るだけである。
此れは明らかに傷風であり,傷寒として軽治してはならない。
況んや傷寒ならば悪寒するが,傷風だから悪風であり,今は畏風であり畏寒ではない,急ぎ其の風を散じないでどうする?
然し邪の湊る所では,其の気は必ず虚している。
だから肺気を補えば,表の風邪は自ら愈える。
益金散風湯:人参0.5 甘草・紫蘇・荊子・花粉1 北味三粒 麦冬・桔梗3銭。
三剤で痊愈した。
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鐸按:方は補よりも散ずるほうが重いのに,何ぜ益金と名づけるのか?
肺が邪に傷つき,其の気が甚だ衰えているのを知らないで,重薬にて大補すれば必ずや受け難いだろう,そうではなく散表の中に少し補益すれば,邪は出やすく,正も又内養されるから,これの方が善い。
紹派傷寒名家験案精選 陳士鐸医案より
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