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胸悶3

胸痺という病名は早くから《内経》にあり,心脈痺阻不通により起る胸部悶痛,胸痛徹背、短気、喘息不得臥が主症の病証である。
現代医学では冠心病に相当する。
急性発作時は缺血性心臓病の心絞痛に相当する。
胸痺心痛の重症は真心痛といい,缺血性心臓病の心肌梗死に相当し,甚しければ旦に発して夕べに死し,夕べに発して旦に死すという程に,生命を脅すものである。
病因の多くは正気虧虚,飲食不節,情志失調,感受寒邪等により,体内に痰濁、瘀血、気滞、寒凝等を生じて心脈痺阻を引き起し,膻中や左胸部に発作性の憋悶、疼痛を出現する。
軽い者なら僅かに偶発的な短暫軽微の胸部沈悶や隠痛を見るだけである。
重ければ疼痛は劇烈で,圧搾様の絞痛を呈する。
常に心悸、気短、呼吸不暢を伴い,甚しければ喘促、驚恐不安、面色蒼白、冷汗自出となる。
この病は常に本虚標実,虚実夾雑である。
虚者は気虚、陽虚が多く,実者は血瘀、痰濁が多い。
発作期には標実を主とし,緩解期には本虚を主な病機とする。
“邪実には通を以って補とし,虚者には補を以って通す”が原則である。
治療には“不通なれば則ち痛む”の理を以って,標本兼顧、虚実同治の法を採用し,不足を補い,有余を瀉す。
補虚は,心の気血陰陽の不足を測り,肝、脾、腎臓に虧虚が無いかを見,陰陽を調え気血を補い,臓腑の偏衰を調整する。
なかでも心気を補い、心陽を温めることを尤も重視する。
瀉実は,気滞、血瘀、寒凝、痰濁に対しては理気、活血、温通、化痰とし,尤も重要なのは活血通絡、理気化痰である。
補虚と祛邪の目的は共に心脈の気血流通にあり,通ずれば則ち痛まずである。
劉啓廷は経験方の益気活血湯を常用して此の病を治療し,効果がすこぶる好い。
益気活血湯(黄芪30 人参10 茯苓30 桂枝・当帰・川芎・丹参15 延胡索30 檀香6 薤白15 炙甘草10)
方中薬の黄芪は補気に扶陽を兼ね,走りて守らず,人参は補気に養陰を兼ね,其の性は守りて走らず。二薬を伍すれば,一動一静,陰陽兼顧,通補して瀉なし,益気固元,心気を扶助する;
茯苓は益脾培土,淡は滲湿し,補しても峻ならず,利しても猛ならず。桂枝は甘温化気,能く胸中の陽気を温通し,散痺開痞する。両薬を合用すれば,心陽を温通し,散寒化濁し,補ってても留滞せず,化しても正を傷つけず;
当帰は専ら能く補血し,又能く行血する,川芎は行気活血の功があり,又能く温経止痛する。両薬は皆血中の気薬であり,補中に動あり,行中に補あり,活血補血,行気消滞をする;
丹参、延胡索は皆活血化瘀の品で,丹参は能く破瘀通散,活血行血する。延胡索は活血行気し,一身の上下の痛みを主治する。合せて養血通経、散瘀止痛となる;
檀香、薤白は皆味辛性温の理気薬である。辛は能く散寒し,温は能く通陽し,理気寛胸,開痺止痛となる。炙甘草は益気復脈し,薬性を調和する。
諸薬を合用すれば,益気養陰、温陽散寒、化濁止痛の功効を共奏する。
加減運用:心前区疼が甚しく、舌辺尖に瘀斑があれば,加桃仁、紅花;
痰湿が閉阻して,胸悶憋気、肢体沈重なら,加半夏、陳皮、枳実;
心陽不振で,胸悶背寒すれば,加片姜黄、附子、干姜;
若し邪気が脈絡に阻滞して,心悸、脈結代が出現すれば,加苦参;
大便干結なら,加熟大黄,熟大黄は瀉下作用が緩和であり,能く瀉下時の腹痛を減軽し,活血化瘀作用を増強するので,尤も老人の体虚にして瘀血ある者に適用される。

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