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益気聡明湯と耳鳴

相談客から「耳鳴りに効く漢方薬があるか?」と尋ねられると、正直に「耳鳴りは難しい、なかなか効く薬が無い。」と今までは答えていました。
実際これまでに耳聾左耳丸(耳鳴丸)・杞菊地黄丸・六味丸の類を出しても良かったという人は誰もいなかった。
これらの処方は皆「肝腎陰虚」という弁証によるものです。
しかし「耳→腎」と直結するばかりではないと気がつかなければなりません。
験案
患者,女性,65歳,耳鳴するようになって20余日,耳鳴は高音調で,夜間に著しく,頭暈,失眠、乏力を伴う。
平素から情緒は平和で,急躁易怒になったり、心情が抑鬱される等の症は無い。
食納は少なく,大便は正常,毎日1回あり,舌は淡暗,苔薄白,脈は沈細である。
就診時の血圧は160/90mmHg,高血圧の病史が10余年あり,血圧はなんとか制御されている。
辨証:脾気虧虚,耳竅失養。
治法:益気健脾,升挙清陽。
 益気聡明湯加減(生黄芪・党参30 蔓荊子10 升麻6 葛根15 黄柏6 熟地黄・当帰15 川芎・赤芍10 酸棗仁30 珍珠母0.6 磁石30)
14剤,水煎服,毎日1剤。
患者は服薬后に耳鳴が前よりも減軽し,耳鳴する時間も減少し,頭暈は好転し,睡眠時間も延長した。
守方して継進すること14剤の后,耳鳴りは痊愈し,未だ頭暈を訴えず,体力が前よりも増強した。
按:耳は頭面部に位置した局部器官ではあるが,其の病変は全身の臓腑と相関がある。
《霊枢·口問篇》に曰く:“耳は宗脈の聚る所なり,故に胃中が空なれば宗脈は虚して耳鳴となる。”
耳は“清竅”に属し,清気陽気が聚集する処で,中焦脾胃と密切な関系がある。
羅謙甫は《東垣先生試効方》の中で益気聡明湯の主治は“飲食不節や,形体の労役により,脾胃が不足して,耳鳴や多暈目昏暗などの内障を得る。
此の薬が能く目を広大にする,久服すれば内外障や,耳鳴耳聾の患を無くし,又精神を過倍にし,元気が益し,身軽く体健,耳目は聡明となる”と云っている。
清代の呉儀洛は曰く:“五臓は皆気を脾胃から禀け,九竅に達する,煩労により傷中すれば,冲和の気は上升できない,故に目昏したり耳鳴がしたりする……”
此れにより患者は耳鳴の外に,乏力、納差、頭暈等の中気不足の症を伴っていたが,益気聡明湯で,補益中気,升提清陽したところ,飲食水穀から化生する精微物質で濡養され、頭面九竅が温煦された,これで耳鳴の多くは内耳への供血不足のためであることが分かる。
故に芎、帰、地、芍で養血活血したので,内耳の循環は改善され,耳鳴が除かれることになった。
 益气聪明汤临证验案举隅 - 环球中医药 より

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