多発性末梢神経障害 しびれ
『中医臨床』v31-4(2010年12月) 丁元慶 治験報告No.6
患者:女性,52歳。
初診日:2008年4月30曰
7力月ほど前から手足が痺れて,ときには痛みもあります。左手と左足が特に顕著で,痺れは冷えたときや夜寝ているときに少しひどくなります。手足がむくんだ感じがして,熱感もあります。頸椎症と診断されてから20年以上になる。
【中医学的診断】麻木(気陰虧虚・営衛失和)
【西洋医学的診断】多発性末梢神経障害(?)
【治法】益気養血,滋陰和営,通経活絡,清熱祛風
【処方】当帰補血湯加減(生黄耆30 当帰・丹参15 葛根・忍冬藤・金銀花30 桂枝9 桑葉24 淫羊藿15 黄柏12 豨簽草30 天麻15) 12剤。
諸薬を土鍋に入れ,水道水1Lを注いで1時間浸ける。2回煎じて薬液が合計500mlになるようにし,2回に分けて温めてから服用する。
四虫片(山東中医薬大学)(地竜,蜈蚣,全蠍,土鱉虫)を1回5錠,1日3回服用。
第2診(5月21曰)
手足の熱感はあるが痺れ疼痛が軽減した。横になると手足の痺れが悪化する。睡眠は改善され,寝付きがよく眠りも深くなった。便は軟らかくなつた。桑葉30に増加+黒芝麻30
第3診(6月4曰)
患者の手足の痺れ・疼痛は手指の関節部分であり熱感を伴う。
+石斛・酸棗仁・夜交藤(滋陰生津・養血活絡),+桑枝・烏梢蛇・連翹(通経脈・通関節)14剤。
第4診(6月18曰)
指先に近い関節部分や,踵・足指がだるく痛む。+防風12
第5診(7月2曰)
痺れは軽減して灼熱感も顕著ではなくなった。+牛膝18,穿山甲9
第6診(7月23曰)
営陰虧虚の象であるため-桑枝・酸棗仁・夜交藤・防風,+枸杞子18,麦門冬30,桂枝9。連翹を30に増加,十二経の血凝・気滞を通じさせる。
第7診(8月13曰)
まだ軽度の疼痛を感じる。当帰を重用して30に,さらに蜂房20を加え,通絡捜風を行う。
第8診(9月3曰)
第9診(9月24曰)痺れ・膨張感は肝腎不足から筋脈不栄となったものである。
-黄柏,+淫羊藿18,千年健30,補腎壮骨,栄筋通絡を行う。
第10診(10月22曰)
現在は左手中指の末端が痛むだけで,両手の痺れが軽減し,两側の足裏や足指関節の灼熱痛,痺れも消失した。
【筆者体得】本例は黄耆との「薬対」に特徴がある処方となっている。
黄耆と金銀花の組み合わせは,益気養陰,活血通脈の作用をもたせることができる。
黄耆と石斛を併用すると,益血・除熱の作用が現れ,脚膝疼冷痹弱を治療する効果が期待できる。
天麻は肝経に入り,黄耆との配合により肝気生発の気をのびやかにさせて,実衛助陽を行って風を治療する。
※痺れは営衛失和で、痛みは気血凝滞である。また手足の灼熱感は熱結陰傷である。全てに対応するように黄耆との薬対に工夫が凝らされている。
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