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瘀熱による不眠

『中医臨床』v33-3(2012年9月) 丁元慶 治験報告No.13
患者:女性,35歳。
初診日:2010年6月15日
主訴:半年前から明確な原因もなく不眠。イライラして怒りっぽく,気力・体力ともにやや劣っており,疲れやすい。食欲普通,便は粘り気があって形にならず,1日1回。6年前に薬物による妊娠中絶を行って以来月経先期となり,経血の色が黒っぽく,量が少なく,血塊があって,顔色が黄色っぽく艷はなく,肝斑が増加している。
舌診:舌質暗紅で周囲や先端部に数多くの瘀斑。中心部と舌根部の舌苔が黄膩。
【中医診断】不寐
【弁証】肝脾失和,気滞血瘀,湿滞化熱,内擾心神
【治法】疏肝健脾,行気化湿,活血化瘀,清熱安神
【処方】血府逐瘀湯加味
柴胡15 生白芍20 桔梗12 鬱金18 川貝母10 茯苓30 桃仁9 川芎6 生・熟地黄15 当帰24 酸棗仁30 牛膝18 紫丹参30,12剤
第2診(6月29曰)
空腹時の胃の隠痛が比較的激しく,食後は上腹部が塞がったような感覚。便は粘り気が強く,臭気も強く排便後に爽快感がない。また便が形にならず,便通は1日に1回,便器に便がついてしまう。
【処方】前回処方-川芎,+茵陳蒿湯(焦山梔子9 茵陳蒿15 酒軍4.5),12剤
第3診(8月3曰)
ときに胃に不快感,起床時には腸鳴,便がゆるく形にならない。
【処方】前回処方-酒軍,茵陳蒿24 山梔子12 12剤
第4診(8月17曰)
空腹になると胃に隠痛が現れるが、食事を摂るとすぐに緩和される。首や肩が硬く張り不快感。湿熱・瘀血の阻滞がいまだ化していない。
【処方】自擬除湿化瘀湯
丹参30 生地黄15 綿茵陳18 焦山梔子9 懐牛膝18 麦門冬30 北沙参24 鬱金18 夜交藤・酸棗仁30  沢瀉15 生牡蛎20 天花粉15,14剤
第5診(8月31曰)
顔色がどんどん暗くなり,しみも増えている。安静時に持続的な耳鳴り,頭部を低くしたり振り向いたりすると眩暈。
【処方】天王補心丹加減にて養陰活血・清熱安神
天門冬・麦門冬・生・熟地黄24 百合30 赤・白芍15 懐牛膝30 沙参・紫丹参18 夜交藤30 桃仁12 酸棗仁・生牡蛎30 肉桂6(後下),12剤
第6診(9月21曰)
振り向いたりすると眩暈,ひどいときは見るものが旋回することもあるが,吐き気はしない。耳鳴り,首や肩がこわばる。
眩暈は湿熱・瘀血により風が内生したためであり,便がゆるく形にならないのは,湿邪が内停しているためである。月経量が少ないのは陰虚のためである。
【処方】前回処方-赤芍,白芍,桃仁,+茯苓30 山薬12 女貞子・天麻18 14剤
第7診(10月26曰)
舌苔黄膩や便のゆるさが依然として改善されず,舌質暗で瘀斑も残っている,湿熱・瘀血の疾患の治療の困難さを物語っている。
牡蛎沢瀉散の意味になぞらえて,牡蛎・沢瀉で化瘀除湿を行う。
【処方】生牡蛎24 天花粉15 山梔子9 全当帰12 桃仁9 夜交藤30 蓮子肉20 懐牛膝15 桔梗12 酸棗仁30 丹参15 明天麻18,14剤
【筆者体得】
王清任は『医林改錯』血府逐瘀湯のなかで「夜寝ているときに夢をよく見るのは,血瘀である。この方剤を1~2剤服用すれば完治する。これほどよい方剤は他にない」と語っている。
瘀熱を引き起こす原因は多岐にわたり,情志の不暢,飲食の不摂生,長患いから瘀が発生した,熱邪が結滞した,陰虚から血瘀を招いたなどがあげられる。
 ※湿熱・瘀血・陰虚のどれも容易にはいかないのが分かる。

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