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膀胱咳

『中医臨床』v31-3(2010年9月) 丁元慶 治験報告No.5
女性,53歳。
初診日:2008年12月4日 半月前にカゼを引き,鼻づまり・咳・痰・のどの痛みなどが現れた。
睡眠中にのどがむず痒いような感覚があり,口が乾いて,その後咳が出ます。痰は黄色で量は多くなく,吐き出しやすい。
舌診:舌質喑紅,中間部に裂紋あり,舌苔黄膩
【中医診断】外感咳嗽
【西洋医学的診断】急性気管支炎
【証名】風熱犯肺,肺熱失宣
【治法】疏風清熱,宣肺止咳
【処方】川貝母10 天花粉15 桔梗12 生甘草・霜桑葉15 北沙参20 仙鶴草30 金銀花・紫苑15 麦門冬24 蟬退15,7剤
第2診(2008年12月11曰)
症状が改善されたが口の中が塩辛く感じ,咳や歩行時,および活動が頻繁になると尿漏れがする。初診時の問診が不充分であったため,数年前から尿漏れが現れていたことに気づかず,病機の分析に支障を来したが,患者の年齢を考慮に入れて,肝腎虧虚に対する治療も兼ねていたことが幸いした。記憶力の減退を感じている。
【処方】金水六君煎『景岳全書』加味
熟地黄30 山薬12 当帰15 桔梗12 麦門冬24 紫苑15 川貝母9 炙甘草・前胡15 百合30,7剤
第3診(2008年12月25曰)
咳は基本的に消失したが,歩行や激しく活動した後に少し尿漏れしやすい。
病因は外感であるが,病機は肝腎不足であると判断できる。このため,本症例は膀胱咳であると診断した。つまり肺経の風熱が上部〔咽頭〕をわずらわしたというのが標実であるが,本疾患の本は下虚不固である。
【処方】同前方-前胡・紫苑,+五味子15,枸杞子20,補骨脂18,太子参30,7剤
第4診(2008年12月31日)
咳に伴う尿漏れも大幅に減少して,睡眠も改善された。しかし昼休みに動悸がして驚いて目を覚ますことが多く,眼が覚めた後も動悸が止まらず不安になる。肝腎虧虚により心神失養となっている。
【処方】熟地黄30 山薬12 全当帰15 炙甘草12 枸杞子15 太子参20 茯苓30 川貝母9 紫石英18 桔梗12 百合・酸棗仁30,7剤
【筆者体得】
患者は口中が塩辛く感じ,記憶力も減退していることから,腎虚に属すると判断できる。本症例の弁証のポイントは,痰と口中が塩辛く感じるという点である。
肺気が正常に宣発しなくなり,肺の水道調整機能が失調して,膀胱の気化が正常に行われなくなったことから,咳をすると尿漏れがしてしまう。
『神農本草経』では,当帰は「咳逆上気」を主るとしている。
心悸には,驚悸と怔仲の区別があり,特に何もしていないにもかかわらず動悸がするのは怔忡に属し,これは虚損から起こるものである。
※本来なら最初から第2診の金水六君煎加味を使うべきだったが、初診の処方が大きくずれていなかったのが幸いした。

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