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痿証(重症筋無力症)

『中医臨床』v29-4(2008年12月) 丁元慶老中医による治験報告No.1
痿証(結節性甲状腺を合併した重症筋無力症)
主訴:右眼瞼が開きにくくなり1年。同症状が悪化し,四肢に力が入らなくなり3力月。右眼が乾く,便が硬い,睡眠・食欲・尿は正常,多発性神経炎を患い10年になる,舌質暗紅,舌苔黄厚,脈滑。
西洋医学的診断:重症筋無力症,多発性末梢神経,結節性甲状腺腫
中医診断:睢目(気血が虚し,腠理が開いたところへ風邪を受け,風邪がまぶたの皮膚の間に入り込み皮膚がゆるんでまぶたが開かなくなる病症)・痿証・麻木
【弁証】脾腎虧虚証(元気虧虚から湿熱が毒を伴い筋肉に壅滞し,経脈阻滞を招いたもの)
【治法】益気補虚,通絡宣痹,清利湿熱
【処方】二妙散加減
(土茯苓60 雷公藤12 茵陳蒿15 黄柏12 蒼朮・白朮18 牛膝15 黄芪24 当帰15)
2006.10~2007.06 までに32診。
2診以降は湿熱内結・気陰耗傷の証として+芒硝3 石斛15。
20診で結節性甲状腺腫が消え、目が開き筋力もかなり改善されてきた。現在は経過観察中である。
【考察】
本症例の病状は複雑だが,病機は終始,中焦・脾胃が中心となっている。
脾胃の運化機能が失調すると,湿熱鬱滞となり,それが長引くと体内に毒が生まれ,気血が損傷する。
そこから気機壅滞,経脈瘀阻となって,最終的に気陰が消耗してしまう。
その結果,前頸部にしこりが現れたり,睢目,視岐(病症名,複視。風,痰,熱邪による疾患や外傷がある場合に現れることが多い)などの症状が現れる。
《素問,生気通天論》:"湿熱が不攘(排除されない)であると,大筋は緛短となり,小筋は弛長する、緛短とは拘のことで,弛長とは痿のことなり"。
[現代語訳]『素問』痿論篇
肺は全身の皮毛を主り,心は全身の血脈を主り,肝は全身の筋膜を主り,脾は全身の肌肉を主り,腎は全身の骨髄を主る。
このため,肺が熱を受けると〔津液が損傷し〕肺葉が枯れて萎縮し,皮毛も脆弱になる。熱邪が肺に長く留まると,痿躄〔四肢が萎えて使えなくなる〕が現れる。
心が熱を受けると下部の血流が上部に流れ込み,下部の脈が虚する。血が虚すれば脈痿が発生し,関節が自由に動かなくなり,脚と下腿の筋肉が弛緩して歩くことができなくなる。
肝が熱を受ければ,胆汁が溢れ出して口が苦くなり,津液が損傷して筋膜が枯渴する。筋膜が枯渴すれば筋が引きつれ筋痿が現れる。
脾が熱を受ければ,胃の中の津液が乾くために口が渴き,肌肉が麻木して肉痿が現れる。
腎が熱を受けると腎精が消耗し,骨髄が減少して腰ゃ脊が動かなくなり,骨痿が発生する。
……「痿症を治療するにはただ陽明を取ればよい」といわれるが,これはどのような理由であろうか?
岐伯は「陽明は五臓六腑を栄養する源泉であり,宗筋(陰茎)を潤します。宗筋は関節を管理,制約する働きがあり,関節の動きを滑らかにします。衝脈は十二経脈の気血を集めて全身の筋肉に行き渡らせ,宗筋で陽明経に連絡しています。陰経も陽経もすベて宗筋に集まり,気街(鼠径部 気衝)で再び会合します。そして陽明経はすべての経脈を統率して帯脈につながり,さらに督脈に連絡するのです。このため,陽明経の気血が虚するとすベての経脈は栄養されなくなり,宗筋が弛緩して,帯脈も経脈を制約する力が弱くなります。このため,両足の筋肉が萎えて動かせなくなるのです」と答えた。
 ※痿証の成因に「湿熱不攘,大筋緛短,小筋弛長」の説があり、それがどうしても理解ができなかったのが今ようやく納得できた。
また [湿熱鬱滞→気陰消耗] が腫瘍への大きなルートであると思われる。

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