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淋証(尿道症候群)

『中医臨床』v30-1(2009年3月) 丁元慶老中医による治験報告No.2
女性,45歳
初診:2006年7月28日
10年ほど前の夏に出張をして,長距離を車で移動しました。そのときは猛烈な暑さで,ずっと多量の汗をかいていました。それにあまり何度もトイレに行くことができませんでした。
車から降りると寒けがして,全身に汗をかき,動けなくなりました。出張先の病院に行き,尿検査をして尿蛋白が十4でした。翌日帰ってから,病院で抗生剤の点滴治療を受けた後,症状はなくなりました。尿の再検査をしたら尿蛋白は陰性でした。でもそれ以降,頻尿や排尿時の逼迫感と疼痛が繰り返し現れるようになったのです。
西洋医学的診断:尿道症候群
中医診断:淋証
【弁証】気淋(肝気鬱結,気化失常,気鬱化熱,鬱熱灼血)
【治法】養血柔肝,開鬱利気,淸熱活血
【処方】沈香散加減
当帰・生白芍15 山梔子・川貝母9 浙貝母・茵陳蒿15 滑石粉18 白鮮皮・瞿麦15, 沈香粉(後下)3 王不留行・冬葵子15
「気淋は,……肺の疾患が膀胱に及んだものである」(『金匱翼』卷八,諸淋,気淋)
当帰・生白芍は,主に養血柔肝の作用があり,さらに排尿をスムーズにする作用もある。
川貝母・浙貝・沈香粉は,疏肝・柔肝の作用があり,鬱をほぐし気機をスムーズにさせる。
白鮮皮は清熱利肺の作用があり,上焦を開き,肝気をスムーズに流して気化を促進する。
瞿麦・王不留行は,活血・通淋の作用があり,佐・使薬となる。
2診:2006年8月4日
【処方】生白芍・当帰15 茯苓・合歓花30 酸棗仁24 石斛18 川貝母9 王不留行15 滑石粉18 竹葉9 百合30 紫丹参15
肝鬱化熱から心神不寧になることが多いので肝鬱気滞の治療には疎肝・柔肝のほかに養心も必要である。
第3診:2006年8月25日 肝腎が虚する年齢であるため,この点も考慮に入れなければならない。
続けて養血柔肝を行い,気化を促進して気血の流れをスムーズにする。
現在,病状は安定しているため,丸剤を作成し薬効をゆつくりと身体全体に行き渡らせる。
【処方】全当帰150 生白芍90 穿山甲60 白僵蚕・王不留行・琥珀粉・茯苓・茯神90 生甘草60 生竜骨・川貝・酸棗仁90
白僵蚕を加えて通経活絡を,佐薬として穿山甲・琥珀を加え搜瘀通淋をはかる。
茯苓・茯神・生甘草・生竜骨を加えて養心安神の効果を得る。
生竜骨は肝に入り,斂魂と浮越の気を抑えることができる。
【考察】車の旅行で,暑熱が湿を伴い、膀胱へ流れ込んだ。
そこから膀胱の気化不利となり,頻尿や排尿時の切迫感・疼痛が現れた。
発病当初の尿検査では蛋白がみられ,抗生剤治療が功を奏したことから,当時は急性腎盂腎炎を発症していたとの推測ができ,また同疾患はすでに治癒したと考えられる。
年齢が「七七」に近づいており,ふだんからせっかちでイライラしゃすいというのは,もともと肝腎の陰が不足し,そこから肝気鬱遏となり疏泄機能が乱れている可能性が高い。
また尿は腎の閉蔵機能により蓄えられ,その排泄は肝の疏泄機能による。さらに,腎陰が不足すると閉蔵機能が失職する。このような原因により,頻尿・排尿時の逼迫感・疼痛が反復して現れるようになったものと考えられる。
 ※夏の暑い時に多量に汗をかき、長くトイレを我慢していたために、暑湿が邪となり膀胱の気化を狂わせたという病機です。あり得ることなので気を付けたいものです。

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