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心経の鬱熱による不寐

『中医臨床』v32-2(2011年6月) 丁元慶 治験報告No.8
患者:女性,40歳
初診日:2008年3月19日
主訴:寝つきが悪くなって3年余り。寒がりで,ときどき口渴がある。ときに胃痛が現れ,便は形にならない。
舌診:舌質紅,舌苔薄黄膩
【中医診断】不寐
【弁証】鬱熱内結,気機失和,擾神傷陰
【治法】開鬱清熱,和中安神
女性は「六七」に近い年齢になると,ちょうど陽明脈が衰え始める。胃痛・便が形にならないのは陽明失和の象であり,口渴は鬱熱傷陰,寒がりは鬱熱内結により陽気が外側まで達しなくなったためである。
【処方】熱鬱湯『証治準繙』+酸棗仁湯
(鬱金・連翹24 夏枯草15 牡蛎24 沙参18 竹葉9 青竹茹15 茯苓・酸棗仁30 知母15) 6剤
第2診(3月26曰)
舌質が紅から淡に変化し,黄苔も薄くなって鬱熱が消散し始めている。また口乾・多飲は徐々に陰虚が表に現れてきたことを示している。
前回処方-竹茹・竹葉・夏枯草+丹参・炙甘草・蓮子肉
第3診(4月2曰)
口乾も軽減したが,飲水量は多い。便は形にならず1日1回。
前回処方-連翹を減量,+山薬,牡蛎を増量
第4診(4月9曰)
鬱熱が基本的に消失したが,便が形をなさないのは陰虚不栄による。陰虚が改善されないのは鬱熱が再発しているから。
【処方】鬱金18 炙甘草12 白茅根30 天麻15 生牡蛎30 焦山梔子6 淡豆豉15 山薬12 蓮子肉24 麦門冬30 延胡索18, 6剤
【筆者体得】
一般的には鬱熱は肝気が鬱結し,気鬱が熱と化してしまうと考えられている。しかし近年では肝鬱ではなく,心経の鬱熱である。心気の流れが悪いことから,心火の不暢を招き,気が鬱して熱と化し,心神が乱されるのである。
鬱熱の病機の対処方法として『素問』六元正紀大論篇に「火鬱発之」〔火鬱はこれを発散させる〕という治療原則が記されている。これは気機の鬱滞により発生した鬱火・鬱熱は,発散という方法により治療をする必要があり,鬱の治療には必ず辛散の薬剤を使用する必要があることを説明している。以上の理由から鬱金・連翹が君薬となる。
鬱金『本草蒙筌』:「性質が軽く上昇するため,鬱による滞りの治療にはことさら効果を発揮する」
連翹『本草綱目』:「連翹の形は人の心臓に似ており,2片が合わさっている。なかでも仁が特に香が高く,少陰心・厥陰心包経の気分の主薬である。」

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