鬱『医学天正記』4
今上皇帝御年28才。
俄然 眩暈して食頃(食事をするほどの間)にして甦る。
御脈は沈細五動(一息に五脈動)。左の寸関は有力なり。
順気湯 八味順気散に半夏を加え、或いは正気天香湯を用い、或いは二陳に四君子を合わせて香附子・縮砂を出入加減して二七日なるも未だ験あらず。
十五日の朝より竹田定加法印が之を療する。
二十六日より祥壽院瑞久法印が之を療するも亦未だ効あらず。
十月二日より盛方院浄慶法眼が之を療する。
十一日の夜半には既に絶え入り(人事不省)諸医は窮還を指し、又余に治療を仰せり。
先ず真珠丸を用い、又麝香丸を、次いで蘇香円を用いた。
(この後、気付いた後もなお胸内煩悶・気鬱・嘔吐などの状態が続いていく)
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・正気天香湯(烏薬、蘇葉、橘皮、香附 干姜 甘草)
・真珠丸《普済本事方》(真珠母22 当帰・熟干地黄45 人参・酸棗仁・柏子仁30 犀角・茯神・沈香・竜歯15)
主治:肝陽偏亢,気血両虧,心神不寧,臥則自覚神魂離体,驚悸多魘,通夕無寐。
・麝香丸《本事方》(麝香 全蠍 黒豆 地竜 川烏)
・蘇香円(蘇合香丸)《太平恵民和剤局方》(蘇合香油・竜脳30 麝香・安息香・丁香・荜茇・炒香附・沈香・青木香・白檀香・訶黎勒・白朮60 乳香30 烏犀角・朱砂60)
主治:中風、中気、中悪之突然昏倒、不省人事、牙関緊閉
・八味順気散《重訂厳氏済生方》《奇効良方》(白朮・白茯苓・青皮・白芷・陳皮・天台烏薬・人参30 炙甘草15 )上薬為細末,毎服9
【主治】気中。 七情内傷,気機逆乱,痰涎壅盛,神志不清,牙関緊急,肢体不温,気口脈沈,蘇合香丸を経用して神志已に醒めたる者に。凡そ有風の人は先ず此の薬 順気を服し,次いで風薬を進む。
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※曲直瀬玄朔は丸薬の類を沢山使うが、御殿医たちは湯薬ばかりのようだ。当時は朝鮮や中国からの薬種輸入で、取引があったのは民間医の方だったかも。
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