« 小児の睡眠時癇証発作 | Main | 頑固な眩暈 »

心筋梗塞後の神経症

『中医臨床』v34-3(2013年9月) 丁元慶 治験報告No.17
患者:男性,54歳。
初診日:2011年8月3日
7日間意識を喪失した事があり,脈拍が過度に緩慢であったためにペースメーカーを留置し,意識を回復した。半年前から前胸部に刺痛が現れ,後背部の中心の刺痛や張ったような感覚を伴う。毎回発作は数分間持続し,自然と緩和される。
気力・体力ともにあまりなく,話す声や身体全体にも力が入らず,よく汗をかく。記億力も減退している。口が乾いてよく水を飲む。常にピリピリ,ビクビク,イライラしてとても怒りっぽい。不眠。
舌診:舌質喑紅,舌苔黄厚膩で中間部に裂紋あり。
【中医診断】①胸痹,②善恐(神経症),③便秘
【西洋医学的診断】①高血圧症,②陳旧性心筋梗塞,③ペースメーカー留置,④神経症
【弁証】労傷元気・元気不足・絡痹心痛
思慮が元神を傷つけ,気虚により神浮・神気不寧の状態となり,心神不安を招いた。
【治法】補益元気,化痰清熱,活利宣痹,寧心安神
【処方】人参10 全当帰15 地骨皮・栝楼30 鬱金18 川貝母9 桔梗・炙甘草12 紫菀30 珍珠粉3(冲服) 丹参15 酸棗仁30, 7剤
第2診(8月10曰)
便は形にならず,1日2回便通がある。食欲はあるが,口が乾いて苦く,げっぷが頻繁に出る。咽頭痛があり咳が出て,白く泡状の痰が出る。便の質がゆるくなったのは,心と胃の気機がのびやかになり始めていることを示している。
【処方】前回処方の栝楼・紫菀を12に减,+旋覆花15 遠志6 石菖蒲9 蘇梗12。7剤
第3診(8月17曰)
時期が盛夏であるため,非常に元気を消耗しやすいことから,治療は益心湯に黄連・地骨皮を加えて,補益元気・養陰清暑を行う。また,桔梗・紫菀・酸棗仁・琥珀を加え,通絡宣痹・寧心安神を行う。
【処方】益心湯(虚尚嶺)加減
人参10 麦門冬60 五味子12 石菖蒲18 当帰15 黄柏12 黄連9 地骨皮・酸棗仁30 川貝母6 鬱金18 琥珀粉3(冲服) 桔梗12 紫菀18 製亀板15, 14剤
第4診(8月31曰)
依然として緊張しやすく,驚悸がして全身に発汗する。げっぷが頻繁に出て,ときに咳も現れる。
【処方】前回処方-琥珀粉・紫菀,+人参15 浮小麦・生竜歯・茯苓30,14剤
第5診(9月14曰)
依然としてビクビクして驚きやすく,ときにイライラする。瘀熱と痰濁が内部で結びついて,気陰不足の象である。
【処方】前回処方-黄連,+蘇子24 紫菀・前胡15。14剤
第6診(9月28曰)
驚きやすさはまだ残っており,驚くと発汗する。
【処方】①前回処方-蘇子,人参を20に変更,+珍珠粉3 (冲服),麦門冬90 鬱金24。 14剤
② ①の処方-亀板,人参を30に,珍珠粉を20に変更,+黄連20 川貝母18 琥珀粉20,3剤量を粉末にして水丸を作成。
【筆者体得】
本症例の基本病機は疲労により元気を傷つけ,心脈がスムーズに流れなくなったために,血が神を養えなくなり,心神不寧となって,胸痹・驚きやすい・恐怖感という症状を招いた。本症例の使用薬材には終始一貫して人参と桔梗を使用し,宣痹通絡・寧心安神を行った。
 ※胸痹や善恐も、つきつめれば気虚による。

|

« 小児の睡眠時癇証発作 | Main | 頑固な眩暈 »

治験」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 心筋梗塞後の神経症:

« 小児の睡眠時癇証発作 | Main | 頑固な眩暈 »