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道三流医学

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早稲田大学図書館蔵の『医学天正記』曲直瀬玄朔(二代目道三,1549–1631)治験録のトップに出ているのが、正親町天皇の中風(脳卒中)です。

 

天皇は人事不省で痰涎が咽にからみ、体は温かく脈が浮緩である。それを竹田定加法印が診察し「傷寒」と診断、次いで半井通仙が「中風」と診断して、二人の診断が違った。最後に曲直瀬玄朔が「中風」との診断を下し、半井通仙の診断と合致した。そこで先ず通仙が一昼夜、薬を進上したが意識が戻らない。通仙がどうしたものかと私に問い、私が薬を進上することになった。果たして翌日に意識が戻り、少しずつ食が進み、平復した。すなわち蘇香円を生姜汁に溶いて飲ませ、その後は小続命湯を2帖にて安堵したものなり。
蘇香円とは蘇合香丸のことであろう。これは「中風、中気、中悪之突然昏倒、不省人事、牙関緊閉」に用いる。
蘇合香丸《太平恵民和剤局方》(蘇合香油・竜脳30 麝香・安息香・丁香・荜茇・炒香附・沈香・青木香・白檀香・訶黎勒・白朮60 乳香30 烏犀角(現用水牛角代)60 朱砂(水飛)60)
なぜ突然『医学天正記』を持ち出したかというと、この度は服部忠弘著の「医の旅路はるか -曲直瀬道三とその師田代三喜篇-」を読了したからです。
蘇合香丸は気付け薬として定評のあるところ、また小続命湯は『中薬の配合』(丁光迪/小金井信宏)の解説では“鬱極”(中風の混迷期)に用いる、となっています。
今日の中医学の知識から見ても妥当な配薬であろうと思われます。
このように優れた医学が、既に室町時代に行われていたという事に驚いています。

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