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湿熱頭痛

『中医臨床』v35-3(2014年9月) 丁元慶 治験報告No.21
清熱利湿,活血熄風による湿熱に瘀を兼ねた片頭痛治療
患者:女性,21歳。
初診日:2010年10月6曰
2年以上前からの頭痛で,右の太陽穴あたりから頭頂部や側頭部,後頭部にかけて脈打つように激しく痛む(跳痛)。
発作の前には口の周囲や両手がしびれて,顔色が黄色っぽく蠟のようになります。光をまぶしく感じ〔畏光〕,周囲の音が耳障りで〔畏声〕,吐き気がして,何度も吐いたことがあります。週に2回は現れ,半日から1日持続する。生理中に頭痛が現れるときは痛みがひどい。
【舌診】舌質喑紅,舌苔薄黄膩
【脈診】弦滑
【中医診断】頭痛
【弁証】肝胃湿熱・挟瘀蘊絡・生風擾神
【西洋医学的診断】片頭痛
【解説】この頭痛は内風による頭風である。内風病は,肝火・肝陽・肝風の内動が最もよくみられる。肝風が上部をわずらわせ,清空不寧・絡脈失和の状態となるため,頭痛の発作が現れたり消えたりを繰り返す。
発作時に悪心・嘔吐を伴うのは,肝気が胃を犯し,胃が和降しなくなるためである。また眼は肝の竅であり,風陽が上部の清竅をゎずらわせるために,畏光・畏声が現れる。
さらに患者の舌質は喑紅であり,内部に瘀熱があることを示している。また舌苔薄黄膩は湿熱の象であり,脈弦滑は湿熱阻絡・肝風内動の象である。さらに弦・滑脈は痰熱內蘊証によくみられる。
【治法】清利湿熱・活血通絡・平肝熄風
【処方】陳茶芽前『方証薈要』加減
(土茯苓45 羚羊角粉1(冲服) 川芎6 明天麻15 白鮮皮18 苦参4.5 全当帰・白僵蚕・蟬退・辛夷花15 蒼耳子6 薄荷9),14剤
第2診(10月20曰)
頭痛の発作回数は減少したが,疼痛の性質や,症状全般および舌象に変化がみられないということは,湿熱がまだ絡にこもっていることを示している。ただし,脈象は弦滑から沈細弦に変化しており,これは肝風が緩和されてきたことを表している。細脈は,湿熱が陰を傷つけたためである。
【処方】前回処方-苦参,+玄参・懐牛膝15 川芎を9に変更。14剤
第3診(11月3曰)
ここ半月はちようど月経の前後であったにもかかわらず,頭痛が現れていない。脈が弦細滑数となっているのは,肝陰不足・肝胃不和によるものである。
【処方】製何首烏・当帰・玄参15 女貞子18 菊花・丹参15 天麻18 懐牛膝・沢瀉・生白芍・白蒺藜15 紅花3,10剤
第4診(11月17曰)
病状は安定しており,頭痛も現れていない。また耳鳴りも消失している。
【処方】杞菊地黄丸6g,毎晚1回服用。
【筆者体得】
若年層の女性の場合,肝火・肝陽によるものは比較的少ない。
湿熱が内部にこもると,気機を滞らせ,肝風を引き起こし,絡を阻止して神をわずらわせるため,頭痛が現れるようになる。湿は六淫のなかで唯一有形の邪気であり,「湿邪は諸邪の窠臼〔砦〕」という言葉があるように,その他の邪気がひそかに隠れる「砦」のような役割を果たす。このため湿邪による疾患は,ほとんどがその他の邪気を兼ねており,なかでも寒・熱・暑の邪気が特に多い。また『医林縄墨』のなかでも朱丹渓が,「六気のなかで,十中八九が湿熱による疾患である」と述べている。
湿熱はなかなか去らず,湿・熱の邪気が合わさると,粉に混じった油のように,それを分けることがきわめて困難になる。湿には粘・滞・膠着という性質があるためであり,湿熱病を治療する際は「湿去熱孤」〔湿が去ると熱は単独となり,治療が容易になる〕ということを強調している。
患者は若い女性であり,2年以上も繰り返し頭痛が現れていたが,飲食・睡眠・二便・月経にはすべて顕著な異常がなかった。体外に六経の証候がみられず,体内でも便や尿に異常が現れていないということは,臓腑には病変がないことを示している。
土茯苓・白鮮皮・苦参は淸熱除湿の作用があり,君薬となっている。

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