王琦教授のアレルギー治療2
各論
1.肺系のアレルギー疾患
百合には潤肺作用があるため,体を調節して固本をする体質調体方を基本としながら, 百合を組み合わせる。
王教授によれば,肺系のアレルギー疾患に現れるくしゃみ・咳嗽・喘などの症状はいずれも肺気上逆現象であり,「邪熱が肺に鬱滞する」という現象である。
そこで治則は体を調節して固本すると同時に,「宣透邪熱・清瀉肺熱・宣降肺気」を中心に行いながら,衛表不固・肺の寒飲・肺陰不足などの証候にも考慮する。
1)アレルギー性鼻炎
『証治準縄』雑病も次のように述べている。「鼽は肺寒であるというのは間違いである。鼻水・鼻づまりがあり,寒さで悪化するからそう思うのだろうが、皮毛が寒邪に損傷されても腠理が緻密なために,熱気が鬱滞して病情が悪化するのだということを知らないのだ」。
基本治則は「疏風清熱・宣通鼻竅」であり,体の調節をベースとして,黄芩・金蕎麦・薄荷など,疏風して肺熱を清除する薬味を加え,蒼耳子・辛夷・白芷・細辛などで辛散宣肺し鼻竅を通利する。
鼻の痒みという症状があることが多いため,百部・鵝不食草などを加えて殺虫止痒する。
衛表の守りがおろそかで冷気に対して過敏なものは,玉屏風散を加えて益気固表する。
肺熱の内鬱が強い場合は,麻杏甘石湯を使用する。
これら疾患の緩解期には,体を調節する処方に玉屏風散を組み合わせて,肺・脾・腎を調節し,益気固本する。
症例1 男性,47歳。2010年6月1日初診。
2年前からアレルギー性鼻炎になり,夜間は鼻づまりがひどい。
ダニアレルギーであり,鼻と咽の痒み・しきりにくしゃみをする・鼻づまりがひどい・鼻水・たまに胸悶がある・舌紅・苔黄色でやや膩・脈滑などの症状がある。
鼻鼽の邪熱が肺に蓄積しており,重症である。
治療は体の調整を優先し,清肺通竅を加える。
過敏調体方合麻杏甘石湯加減
(烏梅20 蟬蛻10 炙麻黄6 杏仁10 石膏30 炙甘草・辛夷10 蒼耳子6 薄荷10 百部20 鵝不食草6 路路通10 金蕎麦15)
『中医臨床』v40-1(2019年3月)「王琦教授の弁体一弁病一弁証によるアレルギー性疾患治療の経験」より
※鼻鼽(アレルギー性鼻炎)は肺寒であるというのは間違いだとハッキリ云っている!
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