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道三流医術

いま曲直瀬道三にはまっています。
道三(1507-1594)といえば、中国へ留学した田代三喜の弟子で、朱丹渓の医学を日本に広めることに貢献した人です。
そして朱丹渓といえば『格致余論』が有名です。
『格致余論』といえば「陽有余陰不足論」ときます。
結局はこれが分からなければ道三流医術が分からないということです。
関西大学の研究員である熊野弘子氏の論文に「江戸前期における中国医書の受容と医者像」というのがあり、そこに岡本一抱の『格致余論諺解』(1696年刊)による解釈が引用されています。
すなわち「陰不足以配陽、孤陽幾欲飛越、因天生胃気尚爾留連、又藉水穀之陰、故羈縻而定耳。所陳前証、皆是血少。内経曰、腎悪燥。」(『格致余論』養老論、 8 a)
(陰は不足して陽に配当できるほどあるわけでなく、単独となった陽気は幾ばくか飛んでいきがちになるが、天生の胃気によってまだそこに留まろうとし、また、水穀の陰気の力を借りる。ゆえに人の体につなぎとめられているに過ぎない。前に述べた証は、みな血が少ないことによる。『黄帝内経』に「腎は燥をきらう」とあるのがこれである。)
 五蔵別論ニ夫レ 胃・大腸・小腸・三焦・膀胱 此ノ五者ハ天気ノ生スル所也ト。故ニ中焦胃気ヲ称シテ天ノナセル生気ト云(『格致余論諺解』)
(この五者は天気が生じるところのものである。ゆえに、中焦胃気は天生の気というのである。)
五府は天の気が生じたものであり、よって五府に含まれる中焦の胃気は天が生み出した気なのである。
ストレスがある限り、陽は有余となり陰は不足する。しかし不足する陰を補うのは胃気であり、胃気のある限りは生きられるという事です。(胃は五府を代表するものである)
『格致余論』が医界に受け入れられたのは1700年前後のことで、それ以後は次第に忘れられていく。代わって登場するのがポルトガル医学や吉益東洞らの古方派で、道三流は後世方派と呼ばれて少数生き残る。
 今日の中医学の流行に伴い、再び見直されているのが道三流医術ではないでしょうか。曲直瀬道三は『啓迪集』や『衆方規矩』を書き残し、朱丹渓らの中国医学を日本化して使いやすいものに工夫しています。
また彼は天皇や室町幕府のお偉いさんや織田信長や淀君や、他の戦国武将や一般庶民らを沢山診察し、『医学天正記』などに残しています。
これから彼の著書に取り組んでいきたいと思っています。まったく、知れば知るほどワクワク気持ちが高鳴ります。

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