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群発頭痛

『中医臨床』v36-1(2015年3月) 丁元慶 治験報告No.23
清熱化痰,涼肝熄風による群発頭痛(痰熱生風)治療
患者:男性,37歳,工場勤務。
初診日時:2009年8月29日
1995年に頭部に外傷を受けて,翌年から頭の左側半分,後頭部と眼球や目の周りが痛む。
吐き気がして,ひどくなると本当に吐いてしまい,汗をかき,目が真っ赤になるほど充血する。気分もイライラして,周囲の騒音がひどく気になる。
その後,毎年9月ごろになると発作が起こるようになり,いったん痛みだすと10日以上続き,その時期を過ぎると痛くなくなる。
飲酒歴は10余年。毎日白酒を250ml飲む。喫煙歴は20年,1日20本喫煙する。性格的にせっかちであり,甘いもの・脂っこいもの・味の濃いものを好む。
舌診:舌質暗紫,舌苔黄膩で乏津
脈診:弦滑
【中医診断】頭風病
【弁証】痰熱生風
【西洋医学的診断】群発頭痛
【解説】
患者は若い男性であり,体格ががっちりして体力もある。性格的にせっかちで行動が速いのは,陽旺のためである。
陽盛の人は火熱内盛になると風火の頭痛が発生しやすい。陽盛火旺であると風と化しやすく,また有形の邪気であるために,発作が現れたり治まったりを繰り返す。
また湿熱が発生しやすいのは『顧松圓医鏡』にある,「煙為辛熱之魁」〔たばこは辛熱の首領である〕,「酒為湿熱之最」〔酒は湿熱の最たるものである〕という言葉の通りである。
患者は陽盛の身体で湿熱が内結して,それが蓄積されて痰を生み,痰熱が風と化して絡・竅を犯したために頭風が発生した。
風は陽邪であり,よく動き一所に留まらない。風火が痰を伴い上部に上り,頭部や目を攻めたために,しばらく爆発するような強烈な頭痛の発作が現れた。
風気の内動は肝に原因がある。肝は目に開竅し,督脈と頭頂部で交わるため,肝風が上ると頭痛が現れ,同側の結膜が充血したり涙が出るようになる。
舌質暗紫,舌苔黄膩で乏津・脈弦滑は,痰熱化風の象である。
病が長引くと絡に入り,なかなか治癒せずに,何年も経ってから発作が現れる。
【治法】清熱化痰・涼肝熄風・通絡止痛
【処方】頭風方(筆者創製方)加減
(白鮮皮15 苦参6 天麻18 釣藤鈞30(後下) 天南星6 羚羊角粉1(冲服) 蟬退18 白僵蚕・夏枯草・菊花15 珍珠粉3(冲服) 生白朮24 生薏苡仁30 白芷9),14 剤
第2診(9月8曰)
ニラと海藻が入った水餃子を食べ,頭痛が再発した。ニラは温熱性のため頭痛が誘発されたが,程度は以前よりも軽減していた。
【処方】前回処方-生薏苡仁,生白朮,+竹笳15 薄荷9 14剤
第3診(2013年6月26曰)
前回処方をすベて服用後は4年間頭痛が起こらなかった。その後も飲酒は断続しており,飲食も摂生していなかったため,10日前から頭痛が現れるようになった。また最近4ケ月は乾癬が現れた。
【処方】白鮮皮30 苦参12 地膚子20 焦山梔子15 白蒺藜24 当帰15 白僵蚕・天麻20 羚羊角粉1(冲服) 蟬退18 製何首烏12 烏梢蛇15 製亀板20(先煎) 凌霄花15, 7剤
第4診(7月3曰)
イライラして怒りっぽく,記憶力が顕著に低下している。便通は1日1回で,便が粘り気を帯び便器に付く。口苦と口臭があり,軽いいびきをかく。
【処方】苦寒剤を長く使用すると化燥傷陰の弊害があるので、前回処方の苦参を9に,焦山梔子を12に減らす。7剤
第5診(7月10曰)
風火の勢いが徐々に落ち着き,頭痛も快方に向かっているが,湿毒はまだ去らず,頑固な乾癬が治癒しない。治療は清熱・利湿・解毒を主にし,涼血滋陰を兼ねる。
【処方】前回処方-羚羊角粉,地膚子,製何首烏,+生地黄18 土茯苓45 滑石15 14剤
第6診(7月23曰)
風火は落ち着きをみせているが,湿熱は取り除きにくく,頭痛が緩和されても,乾癬が完治しない。
【処方】土茯苓30 滑石12 地膚子15 苦参6 白鮮皮・烏梢蛇15 炙甘草6 防風12 凌霄花・天麻15 蟬退18 枳殻12,14剤
【筆者体得】
群発頭痛は発作時の頭痛が耐え難いほどひどく「自殺頭痛」とも呼ばれる。
激しい頭痛と顕著な発作期・寛解期があることが特徴であり,おもに青・壮年男性に現れ,片側の目の周囲・前額部・側頭部・眼球後部に激しく鋭い痛みがあり,同側の結膜の充血・流涙・鼻づまり・鼻水など自律神経の症状が現れる。
群発頭痛の発作時の病機は風火上擾・壅絡擾竅である。
疾患の期間が長引くと,湿熱・痰・瘀などさまざまな邪気が絡に入るために,繰り返し発作が現れるようになる。
発作期は風・火が上部の絡・竅をわずらわせることが主になり,寛解期は内風が穏やかになり,火・痰・瘀などの邪気が内部に潜伏する。
治療は寛解期・発作期によって変化させる。発作期は平肝熄風・涼肝瀉火が要となる。
慢性の群発頭痛の場合は,まず邪正・虚実を弁別する。
邪実は風・火・痰・瘀であるため,治療は平肝熄風・化痰祛瘀・活血通絡を行う。
正虚に関しては主に陰血虧虚の症状が現れるため,治療は養血益陰・柔肝熄風を行う。
また搜風通絡も本疾患の治療に欠かせない治法である。
搜風通絡の薬材のうち,蝉退・僵蚕・地竜・独活・薄荷・菊花・当帰・桃仁などの虫類薬・風薬を常用する。
白鮮皮は清熱利湿・祛風止痛の作用があり『神農本草経』には「主に頭風を治療する」と記されている。
初診から4年後に来院した患者には,乾癬と頭痛が現れており,これはどちらも湿熱・風毒による疾患であるため「異病同治」を行うことができる。
白鮮皮・苦参・地膚子は清熱利湿の作用があり,乾癬の治療も兼ねる。
※ニラを食べたら頭痛が再発した。白鮮皮は頭風を治し、乾癬の治療も兼ねる。

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