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術後てんかん

頭骨内静脈奇形手術後の眩暈・てんかん発作治療
『中医臨床』v37-3(2016年9月) 丁元慶 治験報告No.29

患者:男性,18歳(高校3年生)
初診日:2014年2月11日
【主訴】5年前から発作性の頭痛・眩暈・ひきつけがある。
この半年で眩暈が顕著に悪化した。時に耳鳴りを伴い,嘔吐はない。発作時には真っ直ぐに立っていられない。

2010年に頭痛のために北京の病院で右側頭部開頭による動静脈奇形の切除術を受け,頭痛は軽減した。しかし,ときどき夜間にひきつけが起こるようになり,発作の前には叫び声をあげて,口からは白い泡を吐く。10分ほどで自然に収まるが,発作後は疲労感が現れ,本人に発作時の記憶はない。睡眠中に悪夢を見ることが多いが,朝起きると疲れは取れている。またいびきをかくこともある。
【舌診】舌質暗淡,舌苔薄黄でやや膩
【脈診】弦滑
【中医診断】①眩暈②癇証③頭痛
【弁証】①痰熱瘀絡②生風擾神③傷陰損脳
【解説】もともと頭痛が繰り返し現れており,疼痛の部位は1力所に固定していて,長期間治癒しないというのは,瘀血阻滞に属する。手術により奇形の血脈を損傷し,検査でも側脳室後頭角内血囊腫が発見された。瘀が長く留まると熱と化して痰が生まれる。痰瘀阻絡となると清竅が乱されるために,眩暈・頭痛が現れる。さらに疾患の期間が長引くと,傷陰損脳元神被擾という状態になるため,学習能力にも影響が現れる。
【治法】化痰活血・清熱平肝・熄風通絡
【処方】旋覆花15 天麻18 川芎9 菊花・蟬退18 白僵蚕15 懐牛膝・丹参・鬱金・香附子15 土茯苓30 玄参15,14剤

第2診(3月4曰)
受験勉強に励むため、3月1日夜半に意識障害が現れ,四肢が硬直し,5分ほど持続した後意識が回復した。
化瘀安神・鎮驚熄風に琥珀を,化痰鎮驚に款冬花を加える。
【処方】前回処方-香附子,+琥珀粉2(冲服) 款冬花15, 21剤。

第3診(4月8曰)
4月5日夜にひきつけの発作が5分ほど現れ,意識が朦朧とした。寧心安神・豁痰熄風に石菖蒲・遠志・地竜・蚤休を加える。
処方:前回処方-土茯苓・款冬花・川芎,+連翹15 石菖蒲12 遠志・蚤休6 地竜10, 30剤。

第4診(5月6曰)
眩暈が午後から夕方にかけてひどくなることがある。入試があり緊張は免れないため,石菖蒲を減らして,鬱金・連翹を増やし,清心安神を行う。
処方:旋覆花15 天麻18 菊花・蟬退18 白僵蚕15 懐牛膝・丹参・鬱金18 玄参15 連翹20 石菖蒲9 遠志・蚤休6 地竜10 琥珀粉2(冲服) 35剤。

第5診(6月10曰)
天気が徐々に暑くなり,発汗量が増え,津液を消耗している。養陰生津・化痰潤腸のため,麦門冬・括楼・牛蒡子を加える。
処方:前回処方-旋覆花,+括楼30 牛蒡子18 麦門冬30, 10剤分を粉末状にし水丸を作る。1回6g/1日3回。

第6診(7月8曰)
7月4日の夜はほとんど眠らなかったため,5日の日中はずっと眩暈が続いて,夜にひきつけの発作が2回起こった。やや口が乾き,飲水量が多い。
処方:前回処方で水丸を作る。

第7診(8月26曰)
ひきつけは起こっていないが,全身に力が入らず,顕著な疲労感がある。脈細は暑邪が気陰を傷つけた象である。
処方:前回処方の括楼を20に,牛蒡子を12に,琥珀粉を10に,遠志を12に,麦門冬を45に変更する。15剤分から水丸を作る。

第8診(12月23曰)
全身の脱力感は,心気不足となっているためである。
処方:前回処方-地竜,石菖蒲を24に変更。15剤から水丸を作る。

第9診(2015年6月23曰)
丸剤を服用し始めて1年になり,癇証は現れず,気力・体力ともに改善されたが,精神的疲労があり,記憶力もやや悪い。
処方:前回処方の石菖蒲を30に,遠志を20に,麦門冬を90に増やし,+茯苓30。15剤から水丸を作る。

第10診(2016年2月2日)
癇証・頭痛・眩暈はすべて現れていないが,夢が多く,反応がやや緩慢,瘀熱・痰濁が徐々に消失し,内風平熄に向かっていることを示している。
処方:前回処方-蚤休・僵蚕,+当帰15 熟地黄18,括楼を15に, 牛蒡子を9に変更する。15剤から水丸を作る。

第11診(6月28曰)
処方を変更せずに内服を継続し,治療効果を確かなものにする。

処方:前回(2月2日)の処方-牛蒡子。12剤から水丸を作る。

筆者体得
手術により奇形血管を切除したが,術後に症候性てんかんを発症した。また術後も頭痛は完全には消失しておらず,さらに眩暈も起こるようになった。頭痛の発作がなかなか治癒しないことの基本病機は,瘀血阻絡である。手術により奇形血管を切除し,頭痛の病巣を取り除いたものの,かえって病巣周囲の瘀滞を悪化させてしまった。痰熱と瘀熱により気血の流れが阻まれるために頭痛が起こり,また痰瘀が互いに結びつき,これが神をわずらわせて風が生まれると,突然失神したり眩暈が起こったりする。
※記憶力が落ちた心気不足に 石菖蒲 24g を加味している。認知症にどうか? また潤腸に牛蒡子を使っている。

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