« 緊張型頭痛 | Main | 内経知要1 »

緊張型頭痛2

清熱・通絡・安神による緊張型頭痛治療
『中医臨床』v37-2(2016年6月) 丁元慶 治験報告No.28

患者:40歳,女性
初診日:2010年10月20日
【主訴】患者は毎日8時間以上パソコンを操作している。2年ほど前から両側の太陽穴部位に脹痛が現れるようになり,持続時間も長い。悪心や眩暈を伴うことが多く,ひどくなると睡眠や仕事にも影響が及び,精神的にも不安定である。頭部・頸部に顕著な接触痛・圧痛がある。

【舌診】舌体瘦,舌質紅で尖端部が顕著,舌苔薄黄少
【脈診】弦細滑
【中医診断】①頭風②不寐
【弁証】瘀熱蘊絡,傷陰擾神
【西洋医学的診断】①緊張型頭痛②不眠症
【解説】
長年頭脳労働に従事し,ストレスが多く,運動不足であることが,頭痛の原因である。あまり身体を動かさないでいると気血が鬱滞しやすく,長くなると熱と化す。集中して長時間ものを見ると,必ず陰血が傷つき、瘀熱が絡にこもるようになる。また陰を傷つけると,心神が養われなくなるため,睡眠障害が現れる。舌体瘦は陰血不足のためであり,舌質紅,舌苔黄は瘀熱が原因であって,脈弦細滑は熱結陰虚の象である。
【治法】活血清熱・養陰安神・通絡止痛
【処方】頭風2号方加減(筆者創製方)
丹参18 夏枯草15 天麻18 製何首烏・懐牛膝15 珍珠母30 白僵蚕・蟬退15 菊花18 酸棗仁30 炙甘草9 川芎6, 7剤

第2診(10月27曰)
気温が低下すると,気血がスムーズに流れなくなるため,後頸部に疼痛が現れた。エアコンを使用すると,温かく乾燥した空気が津を傷つけるために,イライラ・不安感・口乾・多飲が現れた。
【処方】前回処方-川芎+炒山梔子9 玄参15, 7剤。

第3診(11月3曰)
せっかちでイライラしやすく急躁,舌質紅,舌苔黄は熱にわずらわされているためであり,脈沈細は陰虚が原因である。
【処方】前回処方-何首烏,炒山梔子6に変更,+枸杞子20 麦門冬30 柏子仁15, 7剤。

第4診(11月10曰)
眠りが浅い・よく夢を見る・頭がクラクラして疲れやすい・口乾・急躁・舌質紅は,陰虚瘀熱,心神不寧が原因であるため。酸棗仁湯を合わせる。
【処方】酸棗仁30 炙甘草15 川芎6 丹参18 麦門冬30 天麻・柏子仁18 当帰15 珍珠母20 白茅根30 竜眼肉15 北沙参18, 7剤

第5診(11月17曰)
左手の甲の湿疹が再発し,瘙痒感が顕著である。湿熱瘀絡が原因である。
【処方】前回処方-川芎・竜眼肉・白茅根,炙甘草9に減,+紫草9 白鮮皮12, 7剤

第6診(11月23曰)
血虚であるうえに風寒におそわれ,頭痛が再発した。旋覆花を用いて辛潤の性質で通絡を行い,辛温の当帰で寒を散らして養血通絡を行う。また荊芥穂・蔓荊子・川芎・菊花を用いて散寒・通絡・止痛を行う。当帰・何首烏・土茯苓・紫草は養血涼血・祛風通絡・除湿止痒を行う。
【処方】旋覆花18 酸棗仁30 当帰15 天麻18 炙甘草9 荊芥穂10 菊花15 蔓荊子18 川芎6 製何首烏15 土茯苓30 紫草9, 7剤

第7診(12月1曰)
寝つきが良くなり、陰血虧虚が回復してきた。このため治療は,中焦から血気を補う張仲景の建中法になぞらえ,桂枝・芍薬・炙甘草を加えて,甘温の性質で補中・生気血・和営衛を行う。
【処方】前冋処方-何首烏・紫草,炙甘草15に変更,+生白芍15 枸杞子18 桂枝6, 7剤

第8診(12月8曰)
頭痛がときどき現れるのは,瘀阻絡痹によるため,桂枝・菊花・川芎を増やして,竜眼肉を加えて補虚緩急を行う。
【処方】前回処方の桂枝を12 菊花20 川芎9に増加,+竜眼肉15, 7剤

第9診(12月15曰)
頭痛は陰血不足のためである。養血益陰・補虚緩急のため酸棗仁湯加減を用いる。
【処方】酸棗仁・茯苓30 炙甘草15 天麻18 百合24 蓮子肉・竜眼肉15 山薬12 麦門冬24 枸杞子・菊花18 香附子15, 7剤

第10診(12月22曰)
諸症状が回復に向かっている
【処方】前回処方の枸杞子を24に変更,+石斛18, 7剤

第11診(12月29曰)
よく夢を見る・目を覚ましゃすいのは,陰血不足である。
【処方】①前回処方を7剤,②前回処方+琥珀粉10 女貞子・当帰15。6剤で水丸を作る。1回6g,1日2回。

【筆者体得】
旋覆花は,下気化痰・降逆止嘔ができるだけでなく,走竄通絡の作用もあるため,頭痛治療の常用薬となっている。また旋覆花には行気の作用があり,なかでも降気を得意としている。『本草新編』には,「旋覆花が得意とするのは転気であって走気ではない。このため気逆している者は,この作用によって気が元通りに流れるようになる」とある。
清代の医家・葉天士は,旋覆花を用いて通絡を行うことを得意とし,「久病入絡」「久痛入絡」の慢性疼痛を多く治療してきた。臨床では,肝経瘀滞・肝絡失和により起こった,各証の頭痛治療に用いられている。

|

« 緊張型頭痛 | Main | 内経知要1 »

治験」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 緊張型頭痛 | Main | 内経知要1 »