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産後の片頭痛

養血・柔肝・安神による産後の片頭痛(血虚肝旺証)治療
『中医臨床』v36-4(2015年12月) 丁元慶 治験報告No.26

患者:女性,38歳
初診日:2010年4月27日
8年前に出産し,その後間もない産褥期の頃から,頭の右側に拍動性の頭痛が起こり始め,その後は毎月1〜2回頭痛がします。

分娩時に出血過多で悪露が少なく,母乳も十分出ていない。頭痛は生理の周期とは関係ありませんし,睡眠中に痛くなるときもあります。拍動性の頭痛で,吐き気を伴い,見るものがぼやけて,毎回2日間ほど持続しており,自然に痛みが治まる。2年前からよく眠れなくなり,記憶力は悪くなり,すぐイライラし,いつも口が乾いています。便は1日1回,形になりません。甘いものを好む。月経が遅れがちで,量が少なく色が薄い。
【舌診】舌質紅でやや暗,舌苔薄黄
【脈診】弦細
【中医診断】①頭痛②不寐
【弁証】血虚瘀熱・木旺生風・心神不寧
【解説】
妊娠中は血を集めて胎児を養い,分娩中は出血量も多く,さらに産後の授乳によって,陰血がますます虚してしまい,片頭痛の発作を招いた。肝は血を蓄え,器質的には陰であり,機能的には陽である。また目に開竅し,肝脈は上部は胸中に入り顔面を循環して頭頂部に達する。
産後に血虚となったために肝が養われず,木が旺盛になって風が生まれた。その肝風が昇って清竅をわずらわせたために,頭痛が現れたのである。
さらに血虚となると,心神が養われなくなるために,寝つきが悪くなり,眠りも浅くなる。記憶力の低下・月経後期・経血量が少なく色が薄い・見るものがぼやけるという症状は,血虚瘀熱によるものである。
血虚肝旺となり,瘀熱が経を循環して上部をわずらわせたために,イライラしやすく,胸部に隠痛が現れた。
舌質紅でやや暗・舌苔薄黄・脈弦細は,血虚肝旺・瘀熱內結の象である。
【治法】養血補虚・滋腎平肝・寧心安神
【処方】酸棗仁湯合仏手散加減
全当帰18 酸棗仁30 女貞子20 製何首烏15 枸杞子20 天麻・白僵蚕・懐牛膝・杭菊花15 牡丹皮12 夏枯草15 川芎3, 7剤。

第2診(5月4曰)便が水っぽく便通が1日1〜2回あり,夜間に頻尿になる。
頭痛・不眠・泥状便はすべて,脾腎虚損により,生化失常・血虚不充となったためである。
【処方】前回処方の当帰を12に減+紅花3 山薬12 黄精15, 7剤。

第3診〔5月11曰)
月経の遅れ・寝つきが悪い・夢が多く目を覚ましゃすい・いったん目が覚めるとなかなか寝つけない・舌質淡紅で周囲に歯痕というのは,すべて心肝の血虚がまだ回復していないためである。
情緒が安定しない・イライラ・両耳の搔痒感・舌苔薄黄・脈弦で有力というのは,肝気が旺盛であるためである。
頻尿・便が水っぼいというのは,木旺乗土により疏泄機能が正常でなくなったためである。
【処方】前回処方-紅花・川芎,当帰・牛膝30に変更,+珍珠母24, 7剤。

第4診〔5月18曰)
頭がクラクラする・顕著な脱毛・睡眠時の覚醒は,血虚不栄のためである。
【処方】①前回処方の当帰を20に変更,+茯苓20 側柏葉12,10剤,2日で1剤を服用。

【筆者体得】
白僵蚕:味は辛鹹で涼性であり,肺・肝経に入る。蚕は桑の葉を食べて成長するため,桑の葉の涼散走泄・粛殺清降の性質を受け,行散走竄の作用が強く,散風熱・清頭目・利肝気・鎮肝風・化痰結を行うことができて,邪実の頭痛治療に非常に適している。また蚕は「血肉有情」の生薬であるため,虚証の患者に使用しても,正気を傷つける心配が少ない。
※肝の器質的には陰,機能的には陽という矛盾した性質から「血虚肝旺」や「血虚瘀熱」が生まれる。

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