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痰熱生風証の頭脹痛

清熱化痰・熄風通絡による痰熱生風証の片頭痛治療
『中医臨床』v36-3(2015年9月) 丁元慶 治験報告No.25

患者:男性,28歳,山東省沂南県出身
初診日:2008年9月17日
【主訴】5年も頭痛が続いている。毎回発作の前には,痛みがある方の反対側の物がぼやけて見える。頭痛の部位は一定しておらず,右であったり左であったりするが,痛みはおもに脹痛である。

発作時には悪心・嘔吐を伴う。またふだんから口乾・口苦が顕著である。頭痛は甘いものやニンニクを多く食べた後に起こることが多い。
【舌診】舌質喑紅,舌苔薄黄膩
【脈診】滑,数
【中医診断】頭痛
【弁証】痰熱生風
【西洋医学的診断】前兆のある片頭痛
【解説】甘いものは湿を集めて痰を発生させやすく,またニン二クは辛熱の性質があるため,内熱の発生を助けて痰湿が熱と化す。痰熱が内にこもると,をわずらわせて風が発生し,頭痛を引き起こす。
【治法】清熱化痰,平肝熄風,通絡緩急
【処方】痰熱頭痛方《験方新編》+大川芎丸《宜明論方》
全栝楼24 牛蒡子・白鮮皮18 天麻15 苦参・黄連9 僵蚕15 菊花18 川芎6  7剤

第2診(9月24曰)
起床時に胃に不快感が現れ,両眼が乾き口苦も顕著であった。この症状は午前中が顕著であった。口乾はあるがあまり水を飲むことはなく,便は形にならず,便通は1日に2回。両眼が乾き,口乾・口苦が現れているのは,痰熱が陰を傷つけているため。起床時の胃の不快感は,肝気が胃を犯しているため。便が形にならないのは,全括楼・牛蒡子の清熱化痰,潤腸通便の作用と関係があると考えられる。牡蛎を加えて平肝・化痰を行い,渋腸に堅大便を兼ねる。さらに薄荷・川芎を加えて,疏達肝気の効果を得る。
【処方】前回処方+生牡蛎15 薄荷9,川芎を9に変更。 12剤

第3診(10月8曰)日中に気力がわかず,動くのがおっくう。
平肝熄風・清熱和中のため,珍珠母・天麻・蟬退を用いて平肝熄風を行い,白鮮皮・苦参で清熱を行って,天麻・旋覆花と同時に使用することで化痰清熱の効果を得る。さらに甘松・旋覆花・白芷で疏肝理気・和胃止痛を行い,僵蚕・蟬退・川芎で平肝通絡を行う。
【処方】珍珠母30 天麻20 川芎・白鮮皮15 苦参6 白芷9 白僵蚕・甘松15 蟬退20 炙甘草12 旋覆花18(包煎),7剤

第4診(10月22曰)早朝は足厥陰肝気が上昇・発散して全身に流れ,天陽が盛んになるにつれて肝気が胃を犯すようになる。このため起床時に胃の不快感が現れる。処方は変更しないが,陳皮を加えて理気和中を行う。
【処方】前回処方+陳皮15 7剤

第5診(2009年10月21曰)片頭痛が再発し,舌質紅で嫩・周囲に歯痕がみられる・舌苔薄少・脈弦細というのは,肝経の陰血が虚して肝経が養われなくなり,肝気がスムーズに流れなくなって,肝陽がわずらわされ動いたためである。当帰・何首烏・玄参・枸杞子を用いて養血益陰・柔肝緩急を行い,天麻・川芎・夏枯草・僵蚕・蟬退・菊花で平肝熄風・通絡止痛を,牡蛎で平肝緩急を行う。
【処方】当帰15 玄参20 製何首烏12 天麻18 川芎6 夏枯草・蟬退15 僵蚕12 生牡蛎24 枸杞子18 菊花20,7剤

第6診(10月28曰)痛みは軽減したものの,なかなか治癒しないのは,肝風が絡に入ったことを示している。舌質淡紅で嫩・舌苔薄白少・脈弦細緩は,やはり肝経が血を養えずに肝気がスムーズに流れなくなっているため。羚羊角粉を加えて平肝熄風・通絡止痛を行い,さらに鹹寒の性質で軟堅や疏肝通絡・久病入絡の疼痛の治療に長けている旋覆花を加える。さらに黄芩を少量加えて,川芎の温燥の性質を抑制し,清肝も兼ねる。
【処方】前回処方+羚羊角粉1(冲服) 旋覆花15 黄芩6,7剤

第7診(11月4曰)陰血が徐々に回復し,諸症状が安定しているものの,また変化が発生する恐れもあるため,玉竹を加えて益陰・柔肝・和胃を行う。
【処方】前回処方-旋覆花,+玉竹20 10剤

第8診(11月18曰)舌質紅で嫩,舌苔薄白,脈弦細は陰血不充の象であり,頭痛再発の原因となる恐れがある。石斛・女貞子を加えて益陰柔肝を行い,治療効果を確固としたものにする。
【処方】前回処方+石斛18 女貞子15,-製何首烏,羚羊角粉  7剤

【筆者体得】
片頭痛は性別による差があり,女性の片頭痛の発症率は,男性をはるかに上回る。男性の片頭痛の発作は,肝火・肝風・肝陽の内盛などの病理要素以外に,飲食の不摂生による痰熱の発生が多くみられる。
ニン二クの辛・熱の性質と甘いものが合わさると,痰熱に化しやすい。
※栝楼・牛蒡子は痰熱頭痛に、白鮮皮・土茯苓は湿熱頭痛を得意とする。

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