王琦教授のアレルギー治療5
各論
2.皮膚のアレルギー疾患
その基本病機は「熱の血分への潜伏」であり,全体的な治則は「清熱涼血」であり,主方は「四草四皮湯」で,薬味は紫草・茜草・甘草・墨旱蓮・冬瓜皮・白鮮皮・牡丹皮・地骨皮であるという。
臨床においては,皮膚病変である「赤く腫れる・搔痒感・渗出・びらん・出血・乾いてひび割れる」という症状のどれが中心かを把握し,「四草四皮湯」をベースとしながら弁証加減および論治をする。
1)蕁麻疹
これは「血虚生風」という症状であるため,清熱涼血を基礎としながら,四物湯(生地黄・川芎・当帰・白芍),二至丸(女貞子・墨旱蓮)などの養血滋陰薬や,牛蒡子・地膚子・白鮮皮・蒺藜などの疏風透熱・祛風止痒薬を加える。
症例4:女性,45歳,2010年11月3日初診。
患者の訴えによれば,10年前に皮膚の搔痒感と丘疹が発生し,多くの病院で蕁麻疹と診断され治療を受けたが効果がないという。
診断:全身の皮膚に搔痒感があり,皮膚描画(十)で,日中は平均3回,夜間は1回発作がある。
発作時には,全身に赤く細長い丘疹ができ,それが連なって面状になることもあり,熱すると悪化する。
その他に口が乾くが苦くないなどの症状があるが,摂食・睡眠・二便は正常である。
舌紅・苔やや白く厚い・脈沈。
アレルゲンは,魚類の混じったもの・ミルク・卵白・羊の肉・シィタケ・大豆などである。
体の調整をベースとしながら,疏風透熱・清熱涼血燥湿する。
過敏調体方合四草四皮湯加減
(製何首烏30 烏梅20 蟬蛻・紫草10 甘草6 茜草10 冬瓜皮20 白鮮皮15 白蒺藜・徐長卿20 苦参15 皂角刺20) 21剤。
第2,3診:上方加減。各21剤。
第4診:2011年1月5日。
蕁麻疹の丘疹と搔痒感は4/5に軽減したので養陰潤燥の力を強化する。
上方+当帰10 生地黄・女貞子20 21剤。
『中医臨床』v40-1(2019年3月)「王琦教授の弁体一弁病一弁証によるアレルギー性疾患治療の経験」より
※皮膚のアレルギーは温病理論の衛気営血の病位のうち最も深い“血分”の熱である。
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