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緊張型頭痛

開鬱怡神・調和営衛による緊張型頭痛の治療
『中医臨床』v37-1(2016年3月) 丁元慶 治験報告No.27

患者:女性,35歳。
初診日:2011年1月11日
もう10年もほとんど毎日頭痛が続いている。寒くなったり緊張したり疲れると顕著に現れます。左腕が痛んで,その痛みが手の甲まで及ぶことがあります。胃が痛くなったり,右の下腹部が痛くなったりします。ときどき動悸がしたり耳鳴りがしたりします。口の中がとても苦く感じ,朝起きたときが顕著です。

寝付きが悪く,ちょっとしたことで目を覚ましやすく,よく夢を見ます。生理の周期は21日ほどで,量が一定していなくて,経血の色が黒っぽくて血の塊が見られます。月経期に胸が脹って痛みます。乳腺が増殖して10年になります。性格はせっかちでイライラしやすく,すぐにクヨクヨと考えてしまうほうです。
【舌診】舌質紅で舌体胖大,舌苔薄白膩
【脈診】弦細
【中医診断】①頭痛②不寐③便秘
【弁証】心肝鬱滞・鬱熱擾神・心神不寧
寝付きが悪く,よく夢を見て目を覚ましやすいのは,心肝失和・血不養心のため。便が硬く口が苦いのは,肝鬱化熱・濁気不降のため。心肝鬱滞・化熱擾神が原因である。香附子を用いて疏肝理気を行い,天麻・蟬退で平肝通絡を行う。当帰・酸棗仁を用いて養血安神を,山梔子・土茯苓で清肝瀉熱を,郁李仁・決明子・玄参・沙参で滋陰養血・潤腸通便を行う。
【治法】疏肝解鬱・清熱安神・通絡止痛
【処方】香附子・天麻15 郁李仁・決明子30 玄参18 北沙参24 懐牛膝・蟬退15 土茯苓24 山梔子6 全当帰15 酸棗仁30, 7剤。

第2診(8月5曰)
肝は「罷極の本」(罷=疲),陽気が振るわなくなると,営衛不和となるため,疲労感が現れ,話すこともおっくうで動きたくなくなる。営衛が正常に増減しなくなると,心神が養われなくなるため,よく眠れなくなり,記憶力が低下する。肝の疏泄機能が失われると,肝胃不和となるため,食欲不振・胃の膨満感・スムーズに排便できないなどの症状が現れる。
治療は,疏達肝気・振奮陽気・調和営衛・恬神悦志を継続する必要がある。
桂枝湯加減を用い,桂枝・白芍・炙甘草で振奮営陽・和営養心を行う。巴戟天で温潤助陽・強志怡神を行い,川貝母・鬱金で開鬱理気を行う。さらに酸棗仁・柏子仁は養血安神を行うと同時に,郁李仁・丹参とともに養血安神を行って,潤腸通便を兼ねることができる。
【処方】桂枝湯加減
(桂枝9 生白芍15 炙甘草9 川貝母3 (粉末,冲服),鬱金15 酸棗仁30 丹参15 巴戟天12 郁李仁24 柏子仁15, 7剤。

第3診(8月12曰)
情緒が不安定ですぐにイライラするのは,心神不寧のため。気力体力ともに不足しており,記憶力が低下して,動くことがおっくうで,他人と交流したがらないのは,陽気不振のため。さらに盛夏で発汗量が多く陰を傷つけやすいため,麦門冬・玄参を加えて養陰・寧心・安神を行う。
【処方】前回処方の川貝母を4.5gにし,+麦門冬30 玄参18,14剤。

第4診(9月2曰)
まだ暑さが厳しく気陰を消耗している。便が硬い。情緒が少しずつ安定してきているため,川貝母は除く
【処方】前回処方-川貝母・玄参+人参6 決明子18,14剤。

第5診(9月16曰)
まだ気機不暢・神機不和が残っている。決明子の用量を増やして,潤腸通便・暢利気機を行う。
【処方】前回処方の決明子を20に増加する。14剤。

第6診(10月14曰)
首と肩が重く,舌質暗淡で周囲に歯痕・舌苔白膩・脈沈細数となっているのは,陽気不展・絡気不暢・営衛失調のためである。便は正常となったため,柏子仁・決明子は除き,淫羊藿を加えて「益精気・強志意・堅筋骨・通陽理気」を行う。
【処方】前回処方-柏子仁・決明子+淫羊藿15,7剤。

第7診(11月11曰)
気分が晴れ晴れとしているのは,陽気が回復し,気機がスムーズに流れて,神安志達となったためである。しかし冬が近づき,天陽は徐々に衰えはじめ,気温が低下して,営衛が和さなくなり,元神がわずらわされたために,あまりよく眠れなくなり,頭痛が再発した。このため,柏子仁を加えて養血安神を行い,菊花を用いて利血気,止頭痛を行う。
【処方】前回処方-淫羊藿+柏子仁・菊花158
桂枝9 生白芍15 炙甘草9 人参6 (単煎) 麦門冬30 鬱金15 酸棗仁30 丹参15 巴戟天12 郁李仁24 柏子仁・菊花15, 7剤

【筆者体得】
病機の特徴としては,労神傷心・神機過用・心神不寧があげられ,病機は労傷筋脈・経脈不利・気血不暢である。病は心肝にあり,肝気不疏・心陽不宣・営衛不和・神機不振・形神失調となっていた。
治療は終始一貫して『難経』の「心を損傷したものは,その営衛を調和させる」という意図を遵守し,桂枝湯加味を用いた。
※川貝母は「気が寒で味は苦辛である。辛味は變を散らすことができ,苦味は降火の作用がある。このため,心中不和により起こった疾患には,すべてこれを使うことができる」『薬鑑』
※郁李仁は「安心志を行うため,驚悸を鎮めることができる。また結した気をのびやかにするため,陽臓が調和する」『薬鑑』
※淫羊藿には、益精気・強志意・堅筋骨・通陽理気の作用がある。『景岳全書』
※怡は喜の意。
※歯痕は,湿ではなく、陽気不展ととらえる。

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