« 内経知要11 | Main | 『方伎雑誌』尾台榕堂から »

瘀熱擾心の不眠

清熱活血・寧心安神による瘀熱擾心の不眠治療
『中医臨床』v38-4(2017年12月) 丁元慶 治験報告No.34

患者:男性,39歳,軍人
初診日:2012年4月24曰
【主訴】2年前からの不眠。耳鳴,性急で焦りやすい,他人と交流をもちたくない。言葉に力があり声の張りもある。

【舌診】舌質暗紅でやや紫,歯痕,舌苔薄黄膩
【脈診】弦滑長
【中医診断】不寐・不安抑鬱状態
【弁証】瘀熱擾神
【治法】開鬱清熱・清熱寧心・養心安神
【処方】開心丹参散(筆者創製方)加味
川貝母4.5 鬱金・夏枯草15 珍珠母・酸棗仁30 淡竹葉6 青竹茹18 全栝楼20 丹参18 苦参3 炙甘草10 北沙参30,10剤

第2診(5月4曰)
睡眠は安定傾向にあるが,まだ耳鳴りがあるのは,瘀阻脈絡・熱擾清竅による。
処方:前回処方-竹葉,苦参を5に変更,+石菖蒲9 遠志6 7剤

第3診(5月11曰)
耳鳴りも軽減したが,舌質暗で尖端部が赤いのは,瘀熱がまだ取り除けていない。瘀熱傷陰の治療に,養陰安神を兼ねる。
処方:前回処方-苦参,+百合30 7剤

第4診(5月18曰)
情緒が安定し,睡眠が改善している。
処方:前回処方-全栝楼(清熱),+麦門冬30 天麻18(養陰安神) 7剤

第5診(5月25曰)
耳鳴りが続いており,利気開竅法が効果を上げていない。治法を補腎養心に切り替える。
処方:前回処方-遠志・石菖蒲,+肉蓰蓉10 茯苓30 7剤

第6診(6月1曰)
耳鳴りが軽減した。瘀熱傷陰が腎陰不足を招いていたようだ。
処方:①前回処方+懐牛膝18 熟地黄30 枸杞子20 7剤
②川貝母4.5 鬱金・夏枯草15 珍珠母・酸棗仁30 青竹茹・丹参18 炙甘草10 北沙参・百合・麦門冬30 天麻18 肉苁蓉10 茯苓30 懐牛膝18 熟地黄30 枸杞子20 12剤
これに,亀板膠100g 蜂蜜500ml,珍珠粉100gを加えて膏方を作る。1回15mlを白湯で,昼と夜の2回服用する。

第7診(7月20曰)
耳鳴りが軽減したのは,補腎の効果が現れたと考えられる。イライラしやすいのは,膏方は効き目が弱く,盛夏という季節柄,外からの暑熱の影響もある。
処方:前回処方②+黄連15 12剤。それを用いて膏方を作る。

第8診(10月27曰)
天の陽気が徐々に衰え,患者の諸症状も安定してきており,人の陽気も少しずつ体内に納まってきた。調和気血・疏調営衛・清除瘀熱を行う。
処方:前回処方-竹茹,黄連の量を20に増,+桂枝12 生白芍15 生竜骨・生牡蛎20 12剤。それを用いて膏方を作る。

第9診(2013年1月2日)
腎の封蔵の力を強化する。
前回処方+玉竹,-桂枝,黄連の量を若干減らす。
処方:川貝母4.5 鬱金・夏枯草15 珍珠母・酸棗仁30 紫丹参18 炙甘草10 北沙参30 玉竹20 黄連・生白芍15 生竜骨・生牡蛎20 懐牛膝18 熟地黄30 枸杞子20 肉苁蓉12 茯苓・麦門冬30 天麻18 百合30 を8剤にし,これに亀板膠100g,蜂蜜600ml,琥珀粉60gを加えて膏方を作る。

筆者体得
『薬鑑』には,川貝母は「気は寒で,苦辛味である。辛味は鬱を散らすことができ,苦味は降火の作用がある。このため,心中不和により生まれたすべての疾患は,すべてこれ〔川貝母〕を用いるとよい」と記載されている。
『本草経疏』には,「鬱金は軽く上昇する性質があるため,鬱滞を開くことができ,調逆気・行瘀血の要薬である」と記されている。
川貝母と鬱金の配合により,開鬱結と宣気機を同時に行うことができる。この配合は,特に心気の鬱結を開き肝気の不暢を流すことに長けており,気分の鬱結を開く作用が強く,さらに清熱涼血・活血散瘀も行うことができる。
鬱金に丹参を配すると,疏肝開鬱・利気活血・清熱安神の作用が得られ,瘀熱内結・気機不暢・心神不寧の病証を治療することができる。
※天麻を麦門冬と同用しているところから、天麻を養陰安神薬と認識しているようだ。
※日本では鬱金を姜黄と間違えて使っている。(カレーの香辛料は姜黄であり、鬱金ではない)

|

« 内経知要11 | Main | 『方伎雑誌』尾台榕堂から »

治験」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 内経知要11 | Main | 『方伎雑誌』尾台榕堂から »