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息苦しくて不眠

滋陰,清熱,安神による陰虚の不眠治療
『中医臨床』v38-1(2017年3月) 丁元慶 治験報告No.31

患者:女性,56歳
初診日:2010年3月12日
不眠になって4〜5年。基本的に健康体だが,血圧がやや高い。1年前に閉経した。

【舌診】舌質紅,舌苔薄でやや黄
【脈診】弦細滑
【中医診断】不寐
【弁証】肝腎陰虧,熱擾心神
【解説】1年前に閉経している,天癸が尽き始め,肝腎陰虧となり,精血不足となっている。陰虚はすなわち「燥」の状態であり,熱邪が内生して,心神をわずらわせる。口乾や飲水量の増加は,陰虚熱擾の象である。
【治法】滋補肝腎陰液・清熱寧心安神
【処方】二仙湯加減
炒知母・炒黄柏20 当帰15 酸棗仁30 川貝母10 牛膝18 珍珠母20 夏枯草15 麦門冬30 天麻18 竹葉5 枸杞子20 玉竹15 石解20, 8剤

第2診(3月19曰)
夜間に息苦しくて目が覚め,ぐっすりと眠れず,日中は少し動くと疲れを感じるのは,臓腑虧損・気虚不寧のためである。
炙甘草・太子参を加えて益気補中・甘緩寧心を行い,香附子を加えて疏利気機を行う。
処方:前回処方-竹葉,炙甘草15 太子参30 香附子15 7剤

第3診(3月30曰)
寝付きが悪い・よく夢を見て目を覚ましやすい・疲労感があり身体に力が入らない・せっかちでイライラしやすい・口乾・咽頭痛という症状は,陰虚熱擾・瘀熱内結・心神不寧となっている。また穢濁が鬱滞し,中焦の流れが滞って濁気が降りなくなったために,放屁の回数が多く臭気も強い。少陰の腎水が不足し,虚火が経をめぐって上部を焼き,歯茎を通る絡をわずらわせたために,咽頭痛や歯痛が現れた。
処方:増液湯合二仙湯加減
玄参18 麦門冬30 生地黄・懐牛膝20 地骨皮24 牡丹皮15 酸棗仁30 炒知母・炒黄柏15 川貝母9 茵陳蒿18 炒山梔子9 沙参30 石菖蒲15 骨砕補9, 7剤 (川貝母,石菖蒲は開鬱散熱,利咽散結)

第4診(4月6曰)
放屁の回数が顕著に増えたが,臭いはない。(睡眠中に気道の通りが悪くなることと関係があるのではないかと考え,夏枯草・山梔子・川貝母・懐牛膝を加えて,清熱安神,散結降気,暢利気道を試みる。)
処方:酸棗仁湯合百合知母湯加減
酸棗仁30 知母15 百合・麦門冬30 北沙参24 丹参18 珍珠母30 懐牛膝18 天麻15 夏枯草24 山梔子9 川貝母10, 7剤

第5診(4月13曰)
睡眠時に息苦しさから目を覚ますのは,陰虚により瘀熱が発生し,気機不利・気道不暢となったことが原因であると考えられる。封髄丹になぞらえて砂仁・黄柏・炙甘草を加え,辛甘化陽・鼓舞気機・調和陰陽・交通心腎を行う。
処方:前回処方-珍珠母・山梔子・知母,+黄柏9 炙甘草12 砂仁18 7剤

第6診(4月20曰)
睡眠はいまだ満足を得られるまでには至っていない。舌質喑紅で絳に近い・舌苔薄黄で乏津・脈沈細弦は,陰虚瘀熱のためである。骨砕補を加えて益腎活絡を行い,女貞子で滋陰清熱を行う。
処方:前回処方+骨碎補15 女貞子18 7剤

第7診(4月27曰)
腹脹・歯茎の腫れ(痛みはない)は,やはり陰虚瘀熱のためである。露蜂房・白芷を加えて散結通絡を行う。さらに黄柏と女貞子の量を増やす。(白芷は辛香・温散・行気で,腹脹や歯茎の腫れの治療も兼ねる)
処方:酸棗仁30 知母15 百合・麦門冬30 北沙参24 丹参18 懐牛膝18 天麻15 山梔子9 川貝母10 黄柏12 女貞子20 露蜂房15 白芷6, 7剤

第8診(5月11曰)
睡眠が改善し,腹脹も緩和したが,歯茎の腫れと息苦しさで目を覚ます症状はなかなか消失しない。歯茎の腫れは瘀熱結滞と関係があり,息苦しさは気道の阻滞と関係があるため,治療はやはり養陰を主にし,利気散瘀・清熱活血を兼ねる。
処方:麦冬門45 百合・北沙参30 枸杞子20 丹参・酸棗仁30 炙甘草12 太子参30 川貝母10 懐牛膝24, 7剤

筆者体得
五臓はすべて陰液を蓄えており,五臓の陰はすべて損傷しやすい。このため,陰虚の不寐の病位は五臓に及ぶが,なかでも心・腎・肝・胃の陰虚が最も多くみられる。
陰虚の不寐の最も重要な病機は,陰虚失養・心神不寧であるが,臓腑の機能はそれぞれ異なるため,現れる症状もそれぞれ異なる。
また高齢による陰虚であれば,陰が陽に変化することなく,陽も生まれなくなる。陰が不足すれば,陽もまた不足する。

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