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瘀熱傷陰の不眠

活血・散瘀・清熱・養陰による瘀熱傷陰の不眠治療
『中医臨床』v38-3(2017年9月) 丁元慶 治験報告No.33

患者:女性,42歳
初診日:2010年10月19日
【主訴】寝付きが悪くなり4力月余り。
【現病歴】4力月前に転居をしたが,改装時のホルムアルデヒドが残っていたため脱毛が現れ,その後寝付きが悪く眠れなくなった。月経は周期が一定せず,経血の色がやや黒っぽく,量も減少した。

【望診】顔色が黄色っぽく,肌に艷がない。
【舌診】舌質紅喑,舌体やや瘦,舌苔薄黄で少津
【脈診】弦細数
【中医学的診断】不寐
【弁証】瘀熱内結・傷陰擾神
舌質紅で舌体瘦・舌苔薄黄で少津・脈弦細数は,すべて瘀熱により陰が傷付き,神がわずらわされたことによるものである。
【治法】活血散瘀・清熱寧心・養陰安神
【処方】清熱散瘀方(筆者創製方)加減
鬱金・丹参18 連翹30 焦山梔子・竹葉9 川貝母10 夏枯草18 珍珠母24 百合・麦門冬・白茅根・北沙参30, 7剤

第2診(10月26曰)
脈がやや滑数に変わり,営衛の気血に疏達の徴候が現れている。
処方:前回処方の鬱金を24に,丹参を30に増量する。

第3診(11月2曰)
就眠がよくなった。清熱活血薬を減らし,酸棗仁(養血安神),地骨皮(清退虚熱)を加える。
処方:前回処方-連翹,竹葉,白茅根,丹参を15に減量,+地骨皮15 酸棗仁30 7剤

第4診(11月9曰)
抜け毛が増えてきた。血虚內熱と考えられる。
処方:前回処方-山梔子,+当帰・側柏葉15 10剤

第5診(2011年4月15日)
中薬の服用を停止。イライラして考え込むことが多くなり,息切れ・動悸・胸の辺りが緊張して縮こまった感覚がある。やはり瘀熱が痰を伴い,心神をわずらわせている。
処方:前回処方の川貝母を4.5に変更し,+珍珠粉3(清心化濁)と琥珀粉2(冲服)。7剤

第6診(5月20曰)
月経が遅れがちになり,経血量も減少する。陰血不足による
処方:全当帰15 熟地黄20 枸杞子15 製何首烏12 鬱金18 酸棗仁30 香附子15 天門冬・麦門冬18 天麻15 沢瀉18 珍珠母20 茯苓30 炙甘草12, 7剤

第7診(5月27曰)
月経が始まり,経血の色も量も正常である。
処方:前回処方-何首烏,+女貞子・柏子仁20(養陰清熱・養心安神) 7剤

第8診(6月17曰)
だいたい30分以内に眠りにつくことができており,一晩で5時間前後眠れている。
処方:焦山梔子9 烏薬15 珍珠母24 淡竹葉9 懐牛膝15 石菖蒲10 天麻・連翹15 麦門冬30,14剤

筆者体得
患者は新居に移り住んでから,思いもよらず脱毛が現れ,それがホルムアルデヒドのせいではないかと疑ったことから,不眠を誘発した。しかしホルムアルデヒドによる脱毛はこれまでに報告されていない。ゆえに二次的に起きた思慮鬱結が不眠の直接原因だと考えられる。
白茅根
は清熱涼血を得意とする。『本草経疏』では,白茅根は「甘寒で内熱を除くことができるため,労傷虚羸を治療する。また益脾(補中)を行い,除熱により益気を行い,甘で血を補う。血熱になると瘀が生まれ,瘀があると「閉」が生まれ,「閉」となると寒熱が現れる。(白茅根の)寒性は涼血を行い,また甘味によって血が生まれる。熱が去れば血が和して,血が和せば瘀が消えて「閉」が通じ,通じれば自ずと寒熱が止まる」とある。

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