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帯状疱疹後神経痛

清熱・除湿・通絡による帯状疱疹後三叉神経痛の治療
『中医臨床』v37-4(2016年12月) 丁元慶 治験報告No.30

患者:男性,47歳
初診日:2015年9月20日
【主訴】20日前に左側前額部に帯状疱疹を患い,その後頭痛がするようになった。左前額部から頭頂部にまで及び,痛みの他に部分的な脹り感・しびれ・搔痒感も現れている。口乾・口苦が現れており,飲水量は多くない。

【舌診】舌質暗紅で周囲に若干の歯痕・舌苔薄黄
【脈診】沈細
【中医診断】蛇串瘡・外感の頭痛
【弁証】湿熱蘊毒・上灼外燔・生瘡損絡
【西洋医学的診断】帯状疱疹後三叉神経痛
【治法】清熱解毒・除湿通絡・緩急止痛
【解説】本疾患は火熱蘊毒に湿邪を兼ねることにより発病する場合が多い。陽明の経脈は「髪の生え際をめぐって額に至る」ため,湿熱蘊毒が陽明の経脈をめぐって上部をわずらわせ,皮膚を焼いたために水疱が現れた。湿熱の毒が徐々に去り始めているもののまだ完全には尽きておらず,陽明の経脈を塞いでいる、瘀熱内結の象である。
【処方】淸胃散合五味消毒飲加減
(黄連6 升麻・牡丹皮15 菊花20 黄芩12 生地黄・紫花地丁15 蒲公英18 桑白皮24 全蠍10 天麻18 栝楼20), 7剤
栝楼で柔肝緩急を,桑白皮で肺熱を瀉して濁気を降ろす。全蠍は,辛味,平性で有毒であり,肝経に入る。祛風止痙・通絡止痛・攻毒散結の作用がある。粉末状に研磨あるいは咀嚼して服用する。全蠍は用量が少なくて済み,さらに止痛薬の作用を強めることができる。)

第2診(9月29曰)
水疱はすべて痂疲が形成され,頭痛も顕著に改善したが,搔痒感・しびれ・腫れぼったさが残っており,夜間にひどくなる。しかし,舌質紫暗で周囲に歯痕がみられるのは,絡脈瘀塞のためであり,湿邪も尽きていない。また脈沈細弦は,邪結絡痹・気血不暢の象であり,脈細は熱邪により陰が傷ついていることが考えられる。
処方:前回処方-蒲公英・紫花地丁+蜂房20,生黄地を24に,菊花を15に変更。 7剤

第3診(10月25曰)
湿邪は「黏」「膩」の性質があるため,すぐには去らない。湿邪蘊絡・営衛不暢・脈絡瘀塞のため治療は,搜風除湿・清熱通絡・和営緩痛を行う必要がある。
処方:升麻鼈甲湯合酸棗仁湯加減
(升麻20 鼈甲24 生地黄18 牡丹皮・知母15 蟬退24 僵蚕15 天麻20 蜂房30 甘草・当帰15 酸棗仁30), 7剤

第4診(11月1曰)
風薬を加えて辛潤痛絡を行い,さらに大量の菊花に白芷を配し,祛風通絡を行う。
処方:前回処方-当帰+菊花30 白芷9, 7剤

第5診(11月8曰)
胃脘部の脹痛・せっかち・不安感・よく夢を見るなどの症状を伴っている。湿熱が胃脘を塞ぎ,絡に籠もって心をわずらわせている。また口乾は津が傷ついたためである。
処方:前回処方-升麻・知母,+黄芩15 石斛18,白芷を15に増量, 7剤

第6診(11月15曰)
決まった時間に左眼窩および前額部,頭頂部に脹痛が現れ,またイライラしやすくなつている。この疼痛は,陽明脈絡の瘀滞だけではなく,心神不寧も原因となっている。
処方:酸棗仁30 炙甘草15 天麻18 旋覆花・白僵蚕15 蟬退20 黄芩9 羌活・白芷6 白芍15 生地黄18 土茯苓30, 7剤

第7診(11月22曰)
前額部などの疼痛は基本的に緩和した。睡眠は良好で,記憶力も改善した。時にイライラしたりせっかちになったりし,便がゆるく1日3回便通がある。また口乾・口苦がある。
処方:前回処方の羌活を3に,白芷を5に変更,+玄参12, 7剤

第8診(11月29曰)
右前額部・こめかみ・後頭部に疼痛部位が固定しない隠痛が現れ,右眼の脹痛を伴って,休んでも緩和しない。これは湿熱蘊絡のためであり,頭痛が緩和せず,情緒がのびやかでなくなったことから,心肝火旺・風陽上擾・頭目疼痛を招いたものである。治療は,涼肝熄風・清心瀉火・活血通絡を行う。
処方:牡丹皮12 夏枯草15 竹葉12 羚羊角粉1(冲服) 珍珠母24 丹参18 穀精草10 白僵蚕・蟬退15 郁李仁24 木賊草・旋覆花・菊花15, 7剤 (郁李仁は滋潤柔肝の作用があり,頭痛の治療を得意とする)

第9診(12月6曰)
心肝の火が徐々に去り,すでに風陽が平らかに近くなっているが,唯一絡に籠もった瘀熱・湿濁がまだ尽きていない。徐々に内服を減少させるよう試みる。
処方:前回処方-木賊草・旋覆花・羚羊角粉・郁李仁, 7剤

第10診(12月20曰)
ここ3日間,頭痛・口乾・咽頭痛・空咳・多汗が現れている。前日の夜間の体温は37.7℃であった。イライラしやすく,便がゆるく1日に2〜3回便通がある。これは外感によるものである。
処方:前冋処方-牡丹皮,菊花を24に変更,+羚羊角粉1(冲服) 金銀花30, 7剤

筆者体得
頭部は人体の頂点にあり,顔面の太陽穴部分は足の陽明胃経が循環している場所である。陽明は水穀の海であり,陽気が旺盛である一方,体内の汚物が溜まる場所でもある。壮年男性である患者に水疱が発生したのは,陽明に籠もった湿熱の毒邪が,経をめぐって上部をわずらわせ,皮膚を焼いたためである。また頭痛は,湿熱の余毒が陽明の脈絡を塞いだために起こった。このように本症例の病は陽明の経脈に存在し,湿熱の余毒が絡に籠もって,絡が通じなくなったために発生したものである。
※本疾患は,風・火・湿・熱の邪毒が体内に潜伏する「伏邪」によって発病する。

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