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虚労盗汗

『中医臨床』v39-3(2018年9月) 丁元慶 治験報告No.37
益気養陰・和中安神による虚労の多汗症治療

患者:女性,78歳
初診日:2016年10月9日
【主訴】3ケ月前から夜に汗を沢山かき,身体も痩せてしまいました。食欲がない。7月初めに突然右半身が痺れ,脳梗塞と診断され,入院治療を受け,痺れは完治しました。よく眠れません。気分も落ち込みがちで,もう10年くらいになります。いつも緊張してビクビクしています。便は固い,口臭がひどい。

【舌診】舌質喑紅,舌苔薄白で全体的に裂紋
【脈診】沈細で無力
【中医診断】汗証・虚労・便秘
【西洋医学的診断】糖尿病・末梢神経障害・サルコぺニアおよびフレイル
【弁証】気陰虧虚・形神失和・営衛失調
【解説】7月の暑気のため,気陰ともに損傷して,気血不暢・脈絡渋滞となって,脳梗塞を起こした。気虚不摂・陰虚不蔵となって,盗汗が現れた。生薬は質が軽く効き目の高いものが適しており,速く治療効果を上げようと盲目的に滋膩の生薬を用いてはならない。
【治法】益気養陰・養心安神・開胃進食
【処方】炙甘草湯+当帰補血湯
人参(先煎)6 生黄耆20 当帰12 麦門冬24 熟地黄15 陳皮・炙甘草12 蘇梗15 酸棗仁30 砂仁12, 7剤

第2診(10月16曰)
食欲が改善し,食事量もやや増加した。便通がスムーズで2日に1回あり,便も軟らかくなった。食事をすると発汗が多くなる。
処方:前回処方+浮小麦20, 7剤

第3診(10月30曰)
食後に多汗となり,発汗後に身体が冷えるというのは,気虚不固・控摂無権となっているためである。食後は衛気が胃に入り消化を行うため,膚表の陽気が不足して多汗となる。
処方:前回処方の黄耆を30に増やし,+麻黄根15 黄柏・五味子9, 7剤 (黄柏で陰火を降す)

筆者体得
久病により気が損傷すると,気の固摂の力が低下し,そこから陰火が内生することに加え,陰虚も内熱を生むため,津液を体内に留めておくことができなくなって,発汗が止まらなくなる。
サルコぺニアやフレイルは虚労の「肉極」(羸痩、潤沢さがない、飲食から肌膚を生じることできない)に相当する。
黄耆は益気固表の作用があり,蜜炙すると補中益気の力が増加して,さらに昇挙清陽を行える。また生で使用すると,行血利水・生肌托瘡を行うことができる。
麦門冬は甘寒の性質をもち,養陰だけではなく補気も行うことができる。筆者の師である盧尚嶺氏は,臨床で麦門冬を用いて補気を行うことに長けている。盧氏は「麦門冬は甘・平で,心気・肺気を補うことを得意としており,補いながらも燥・膩の弊害がなく,また人参の甘温剛燥という性質によく対応できる」と強調されていた。
人参に熟地黄を配すると,気味がすべて揃って甘・温・厚・重という特性をもつようになり,益気補中・培本固元・塡補精血を行うことができる。
人参・熟地黄・麦門冬の配合は「三才」と呼ばれている。『儒門事親』の三才丸(人参, 天門冬,熟,乾地黄)や,『温病条弁』の三才湯(人参,天門冬,乾,生地黄)などは, 真陰傷損の治療に用いられているが,これらの処方は炙甘草湯からインスピレーションを得ているという。

 

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