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主証と客証について

日本では「標本緩急」よりも「主証客証」を強調する。それは随証治療・方証相対を治療の基本としているからです。
中医学と日本漢方との違いは実にこの点にあります。
病気の本質である「病因病機」よりも、治療に直結する「症状外証」の方に力点を置いています。(病名が分からなくても処方が出る)

以下『叢桂亭医事小言』より4

病因と外証を合わせて方は処すべし。是『素問』に標本と称するものなり。‥‥‥長病・痼疾ほど因をとらねば治すことならず。

又外証に主客の差別あり。是を主証・兼証とす。

さて主客のとりように付いて一つの話あり、夏日、奥州白川郡渡瀬村の農民の娘、産をしたりけるが時々寒熱ありて大汗流れる如く、遥かに予を迎う。豪農なれば医者大勢集まりて、衣被沢山着せて大事にかけて戸障子も閉じて、独参湯と大補湯にて数日を連服すといえども、大汗二、三日に一発し、少しずつの汗は毎日なり。
予脈を診するに浮散数、産後血熱の常体なり。飲食乏しく傍人の騒ぎ強き故、当人も必死の気になりて甚だ衰えたる様なり。
医生等曰く、汗多く陽亡きは恐るべきの第一にて、頻りに参耆の効を頼めども、自汗多く衣被も二、三度ずつも着替えるに猶 滫しゅん(滲)すと云う。
予病家へ告げて曰く、「着服多く戸障子も閉じたれば、温熱の時節に余り欝して悪しし、平日通りに少し心を付けて取り扱ってよし。気力益々衰えるなれば、よき程にすべし。以来は汗も出まじ」と言い含めたれば、医生等予が高言吐いたりと思いしや詰り問ふ(詰問した)。
予曰く「公等は兼証を治せし故に治することはなし。自汗ばかりが風ふと(ただ急に)発するならば、公等の主方通りてよきことならんが、先ず寒熱が来てから汗を発するは、汗は兼証にて寒熱が主証なり。寒熱をさえ取れば汗は出ずべきはずなし。是主客の証の取り違えなり。極めて知る、此の婦人は産後壮健をたのみて保護の仕方悪くして此の証を発したらん」と云えば、
家人皆曰く「平産故にあまり用心もせざりけるが、一日悪寒戦慄して此の如くになりたり」と語る。
産後二、三日を経て発熱するは血気も新たに動きて、未だ落ち着かぬ処へ外より動かす故に、件の如き証を発するもの多し。即ち柴胡桂枝湯を作りて飲ましむ。二宿逗留する中、起色を得て、是より寒熱来たらず。寒熱なき故、発汗もなく全快したり。主客の見分けようにて病人を不治の郷へ案内して引き込むようになることあり。
‥‥‥
今日一般に認められている定義は次のようです。

証には主証と客証とがある。主証は必発の症状であり、客証は、主証があるために出現したり消えたりする症状である。漢方における処方は、この主証によって決定される。[矢数圭堂]
例:
柴胡加竜骨牡蛎湯では、胸満が主証で煩驚・小便不利が客証です。(目黒動琢口訣)
半夏瀉心湯では、心下痞硬は主証で、嘔吐、下痢は客証である。《漢方診療医典》

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