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芍薬甘草湯の力量

日本では、芍薬甘草湯は「こぶらがえり」に効くというのが通説になっており、肩凝りでも何でも筋肉の引きつりさえあれば安易に使われています。
日常的に起きる「こぶらがえり」は一時的な筋肉の痙攣に過ぎず、暫く経つと緩解するので肝の陰血失養の証とはとても思えない。
症状だけを見て判断するのは随証治療、もっとよく本質を見ないと芍薬甘草湯の本当の方意と力量を見逃してしまいます。
芍薬甘草湯は薬味が少いが効力は強く,《内経》は"酸甘化陰"と云っており,大いに補血柔肝・緩急止痛する力がある。
桂枝湯から抽出された処方だが,臨床効果は桴鼓の如く証が合えば,稀有の効果を示す。

李某,男,26歳。
右腿の鼠谿溝に突起した腫物が出来,大きさは鶏卵ほど,色は紅くなく,疼痛が続く。
医用の針で探ったが何も出てこない。
患者はただ右腿が拘急発緊し,腿を伸ばせない,若し無理に踏みつけると,疼痛忍び難く,歩くには松葉杖が必要になり,足跟は地に着けない。
毎晩 両腿が抽筋拘攣して疼痛が堪えられない。
脈は弦細にして数,舌質は紅絳で苔はない。
辨証:本証は右腿鼠谿部に鼓起する一包があり,大きさは鶏卵ほどで,膿血は無く,腿脚が攣急して伸ばし難い,是れは"筋疝"である。
脈は弦にして細,舌紅く少苔,これは血不養肝である。
肝は筋を主り,筋が陰血の濡養を失えば,绌急痙攣して"筋疝"の変を発生する。※绌(欠乏する)
陽気は夜 陰を行る,今 陰虚血燥となり,毎夜間に腿脛抽筋を発生している。
右腿が巳に伸直できず,足跟を地に着けられないのは,仲景が云うところよりも重症である。

治法:甘酸化陰・養血舒脈・緩急を主とする。
処方:白芍30 炙甘草15

一剤を服したら夜間に腿部の抽筋は起こらなかった。
三剤を服し尽したら,鼠谿の"筋疝"は全く消えた。
同方をさらに両剤服して患腿は伸開でき,足跟は地に着けられ,松葉杖が要らなくなり,昂然と歩いて退院した。
 劉渡舟『医論医話100則』より

芍薬甘草湯とこむらがえり
芍薬甘草湯とこむらがえり2

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