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顔面神経麻痺

顔面神経麻痺後の続発性微風症治療
『中医臨床』v40-2(2019年6月) 丁元慶 治験報告No.39

患者:女児,2歳6ケ月
初診日:2008年9月25曰
【主訴】1ケ月余り前から口角が右側に歪み,左眼瞼が閉じられなくなった。便は硬いことや便器に付くことが多い。
【舌診】舌質紅でやや淡,舌苔薄黄膩
【脈診】細弦
【中医診断】口僻〔顔面神経麻痺〕
【弁証】湿熱蘊結不化,陽明脈絡滞塞

【解説】病が足の陽明胃経に存在していることを示している。舌苔黄膩は湿熱蘊結の象である。その湿熱が足の陽明胃脈に及び,湿熱が胃絡を阻滞したために,顔面の筋脈・筋肉が養われずに口僻が現れたと考えられる。
【治法】清熱利湿,通利陽明経脈
【処方】升麻葛根湯加味
升麻9 葛根12 茵陳蒿・天麻・当帰9 白僵蚕・蟬退10 天南星3 炙甘草6 , 7剤
2回煎じて合計で100mlの薬液を取り,2回に分けて温服する。

第2診(10月8曰)
睡眠中の寝返りが若干多く寝言も発するが,飲食は正常である。最近は便が硬く色が黒い。寝返りが多く寝言を言うのは,陽明熱結により陰が傷付き,熱邪が上部をわずらわせて心神不寧となったためである。
前回処方-升麻・茵陳蒿・天南星+玄参・牛蒡子・菊花・紅花・黄芪(養血潤腸・益気活血)

処方:全当帰15 玄参6 葛根9 牛蒡子12 天麻・白僵蚕10 蟬退12 菊花・黄芪15 紅花3 炙甘草9, 7剤

第3診(10月15曰)
寝返りが多く寝言を言う。
前回処方-僵蚕+麦門冬・酸棗仁(益陰血・安心神), 7剤

第4診(2009年1月7曰)
患児があくびをしたり泣いたりする時に両側の眼瞼裂が不均等で,口角も左側に偏る。
顔面神経麻痺の治癒後に,表情筋の痙縮が現れることがある。『素問』調経論には,「筋肉がわずかに蠕動することを微風と呼ぶ」とある。
処方:芍薬甘草湯加味
生芍薬12 炙甘草10 天麻15 酸棗仁20 白僵蚕6 丹参10 生竜歯15, 7剤

第5診(1月14曰)
あくびをするとやはり両眼瞼裂の大きさや口角が対称的ではなくなる。
前回処方+茯苓12 露蜂房9,14剤

第6診(2月4曰)
陰虚不充・湿熱内蘊として
処方:生白芍12 炙甘草10 丹参12 酸棗仁20 露蜂房15 天麻・茵藤蒿12 生麦芽15,14剤

第7診(2月18曰)
患児が常に左目に触れているのは,搔痒感か不快感があるものと考えられる。
前回処方+菊花9(疏風止痒),14剤

第8診(3月4曰)
症状は朝方に重く夕方になると軽くなる。湿熱内蘊・血虚失養・内風不寧として
処方:生白芍12 酸棗仁20 丹参10 連翹24 焦山楂12 茵陳蒿・天麻15 僵蚕9, 7剤,2日で1剤。

第9診(3月11曰)
肝気もスムーズに流れて筋脈が養われるようになった。

筆者体得
本症例の内因は湿熱壅阻であり,これは伏邪に属する。飲食の不摂生により,湿熱が内生して胃にこもったのである。湿熱内結となると陽明の気血がスムーズに流れなくなり,脈絡が和さなくなるため外邪に侵されやすくなる。(発病の外因は外邪の侵襲である)
口僻後に,表情筋の痙縮やクローヌスまで発症する患者がいる。筋肉がピクピクと動くことであり,中医の病名は「微風」という。
おもな原因は,陰虧血虚,風陽内動である。営衛失和・血気不足となると,風がおのずと内生する。また陰虚失養から心神不寧となり, 筋脈も養われなくなる。

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