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下肢厥冷

病例:
李某,男,43歳,北京人,某工場の干部。
主訴:1978年10月,ハッキリした誘因も無いのに双下肢に発凉を自覚する。
某医は腎陽虚証と診て,金匱腎気丸、虎骨酒、青娥丸 等の大量の温補薬を用いたが,病情は抑えられず,どんどん悪くなっている。
冷感は上は腰部から,下は足心まで,あたかも裸足で冰上に立っているようで,寒冷は骨に徹する。
同時に下肢麻木を伴い,虫が這うように痒く,小便は余瀝して陽痿の証もある。
1980年1月11日に劉渡舟教授に診治を転請した。

患者の素体は健康で,面部は肥豊し,両目に神あり,舌質は色絳、少苔,脈は弦にしてやや数。
飲食は故の如く,大便は不爽,小便は短少で黄色である。
初め四逆散を投じ,陽厥の証治を試みて,薬進すること三剤,しかし厥冷は依然としている,そこで又病情を質したところ,患者は睡眠ができず,乱夢が多く,時々心煩あり,汗が出易いと云う。
気をつけて見ると舌尖は楊梅のように紅く,脈は数で,下は陰虚で上は心火独旺の証となっている。
これは黄連阿膠湯の証と合致する。
《傷寒論》第303条に云く:"少陰病,之を得て二三日以上,心中煩し,臥すを得ず,黄連阿膠湯が之を主る。"
これは水火陰陽不交の治則の説明である。
此の証は心火上炎に因り,受けるはずの水が無くて,心煩少寐、多夢汗出となっている;上では火盛だが,陽気が下達できていないため,下肢が陽気で温められず,上下の陰陽が順接していない,それで厥となっている。
四逆散は疏気通陽するのだが上盛の火を瀉すことが出来ない,それで薬効が現れなかった。
下方に改めて治療する。

黄連阿膠湯:黄連9 黄芩3 白芍6 阿膠9 鶏子黄両枚

服薬三剤の后,患者は下肢の寒冷麻木感が消退するのを覚え,心煩、汗出、失眠多夢 等の証もみな明らかに好転し,小便余瀝と陽痿も亦改善した。
舌にはまだ紅赤と少苔があるが,脈は弦で微数,引き続き同法で治す。

処方:黄連9 阿膠10 黄芩3 白芍9 鶏子黄両枚 牡丹皮6
 ※牡丹皮は清熱凉血により,血中の伏火を治し煩熱を除く。

1月30日,適たま降雪があり,寒風凜冽たるも,患者には異常な寒冷痛苦は無く,腰以下の厥冷証は愈えた。
 劉渡舟『医論医話100則』より

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