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四逆散3ー胃癌

王某,男,68歳,農民,1990年3月6日初診。
胃脘が痛み,食欲がなく,日ましに消痩し,もう半年余りになるが,ここ二十日ばかり重くなっている。
忻州地区の医院で,胃鏡検査をし,賁門下の小弯側に3cmx3cmの巨大潰瘍が発見され,表面は死苔のようで,周辺が不整斉で,隆起しており,胃癌と診断された。
患者の大骨は枯槁し,大肉は陥下し,面色は萎黄で,艶が無い。
胃脘の疼痛は劇しく,それは食后に重くなり,手を近づける事ができない。

夜間には疼痛が更にひどくなり,呼び声が絶えず,左右の隣舎に響き,注射でやっと緩解する。
嗳逆と呑酸や,悪心嘔吐し,食物を吐出したり,或いは痰涎を吐く。
大便は十余日にやっと一行あり,未だ吐血と黒便は無い。
口干と口苦,舌質は淡白,脈象は弦細。

腹診:腹壁は柔軟で,心下を圧すのを拒むが,未だ癥塊を触れない。
脈証分析:飲食は進まず,脾胃の損傷で,気血は化生せず,中焦に留蓄したものは,痰飲となる;加えて肝気鬱結,気滞血瘀のため,頑痰や死血が結し,日久しくして癌腫を形成している;癌腫は更に脾胃の升降を失わせ、胃腸の輸導障碍となっている。
故に腹痛は劇烈で,嘔吐し便せず,不食のため症状は日一日と重くなっている。

《素問·至真要大論》に“堅なれば之を削り,損なれば之を益す”とあり,又 東垣は“人は胃気を以って本となす,胃気は又下行するを以って順となす”の意あり,健脾益気・行気消瘀・調理升降の数法を一度にしなければならない。

四逆散合呉茱萸湯加味(柴胡12 白芍・枳殻15 甘草6 人参10 呉茱萸6 三稜・莪朮30 黄連6 紫蘇子30 生姜3片 紅棗6枚) 二剤。

二診:薬后の晩に大便が通じ,心下の疼痛が減軽し,オピオイド鎮痛薬は使わなかった。
なお悪心嘔吐し,嗳逆呑酸もあり,舌脈は前と同じなので,再び原方を三剤進めた。

三診:疼痛は止り,もう嘔吐をせず,元気と食欲が出て,大便は日に一行ある。
生機が出てきたので,原方に鶏内金10gを加えて三剤。

四診:胃脘痛はもう起こらず,汎酸は止り,食欲が大いに増え,舌色は淡紅に転じ,元気が好く,見違える感がある。
脈象は弦細,心下になお拒圧感があり,肢体が時々顫えるのは,気血虚損のせいで,健脾補中の品を求めている。

四逆散合四君子湯加味(柴胡12 枳殻・白芍15 甘草6 人参10 白朮・茯苓15 三稜・莪朮・牡蛎30 鶏内金10) 毎日一剤。

中州の脾土は日月とともに気血を化生し,津液を敷布し,臓腑を資生し,肢骸を充養した。
服薬36剤で,面色は紅潤に,立ち居は自由,脱肉破䐃の象は少しずつ去り,紫気東来の兆が待たれます。
夏には,街に出て,人と興ずるようになった。秋に入り,若返ったように,田に下りて働いた。
翌年は,早朝に出て晩遅く帰り,寒熱を問わず耕耘し,往時に帰ったように,飲酒して楽しみ,苦しかったことが嘘のようになった。
四逆散原文,配方,方歌,四逆散加減運用医案 より

※漢方/中医学 ここでは抗癌性の薬草は何も用いていない。脾胃の升降を正しくする事によって治療が成功した。現代医学ではこういう観点が不足している。


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