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四逆散2ー痰飲

孫某,女,48歳,原平市人。
夫は曽つて商売をして大金持ちだったが,経営に失敗して,大きな債務をかかえ,夜逃げして,五年になる。
孫にはもともと肝硬変があったが,13年前に流産した后,受けた静脈注の抗菌薬で頭痛・身痛・足痛となり地に着がつけない。
夜逃げしてから,痛みは益ます劇しくなり,また右脇が疼痛し始め,双腿は沈重で,脹れて麻れている。
理由もなく悲哭したり,しばしば欠伸したり,或いは心煩し,鋸のような音が聞えたりする。
瓜を噛む癖があり,毎日の食は500gほどで,減らせない,如し減らすと,瓜を噛むのが止められなくなる。
多方に治を求むも,軽減せず,貧病が重なって,困り果てている。
2006年10月17日に隣の聶某さんに連れられて診を求めてきた。

患者の顔色は黯淡,面は太っており,眉間に愁いのたてじわ,目に泪が溢れ,突然泣きだす,舌は淡紅,苔は白膩。
食欲はあり,口苦く冷飲を欲し,腹は脹痛せず,大便は日に一行。
鼻涕、痰は多く黏稠。月経は正常。脈は沈滑で有力。
腹は膨隆しており,腹壁は軟,心下、右脇下は拒圧あり。肝機能は正常。
症としては悪くなく,混乱して辨識し難い。
然し面黯体肥や,脈滑と苔膩から,気鬱痰飲と断定できる。
《素問·疏五過論》に云わく:“嘗つて富み后に貧するは,名づけて失精と曰う。”失精とは,情志抑鬱の病也。
憂思して気悩み,傷つくことが断えなければ,気は結び痰が生じ,経絡を塞痺して諸痛が止まらなくなる。
しばしば欠伸し、善く悲哭するのは,臓躁である,鬱結の陰変なら甘麦大棗湯が主る。
本案は心煩して冷飲を欲するから,甘麦大棗湯ではない。
瓜を噛むのは,怪症に痰多しの解釈が適用されそうである。
舒肝解鬱,清熱化痰のため
四逆散加味(柴胡・白芍・枳実15 甘草・大黄10 半夏・茯苓15) 三剤

二診:脇痛が大いに減ったが,頭痛・身痛や,痰が多く,頭悶するのは変わらない。
病歴は五年にも及び,沈痾痼疾となっているが,体脈は弱くないので,峻薬で治すことにする。

(柴胡・白芍・枳実15 甘草10 半夏・茯苓15 礞石滾痰丸12) 五剤

三診:脇痛は止り,頭身痛も軽くなり,瓜を噛むのも止り,悲哭することもなくなった。まだ心煩や,脈舌は同じである。守方続進五剤。

四診:頭身痛・腿憋麻木は未だ全ては止まらないが,かなり少なくなった。
面の黯色も亦明らかに浅く淡くなり,苔は薄白,脈は沈滑。
くよくよしないよう,晩飯を少くするように云って,一日に逍遥丸6gとし,連用すること一月で,病源が消えた。
四逆散原文,配方,方歌,四逆散加減運用医案 より

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