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四逆散1ー乳衄

『傷寒論』の四逆散(枳実・柴胡・白芍・炙甘草)はシンプルでも応用の広い処方です。
先賢に“肝は五臓の賊”,“百病は気から生ずる”という説があります。条文中の「或いは咳し,或いは悸し,或いは小便不利となり,或いは腹中痛み,或いは泄利下重する」のは,皆 肝鬱気逆より生じ,克土侮金・肺失清粛・脾胃失運となった象です。次に四逆散加減の多様な運用を追ってみます。

翟某,女,55歳。
右乳に泣血が始まって七ケ月余り,量は多くなくて,僅かに紅く局部を染めるだけだが,偶に多い時もある。
省の腫瘤医院では乳腺管拡張と診断され,手術治療が建議された。乳房を切除すると聞いて,身震いして,余に診を求めてきた。
面頬は紅赤で,形肩は痩削し,乳頭が大きく凹陥している。約1mmほどの血跡があり,紅くもなく腫れてもいない。舌質は淡紅,苔は薄白。
乳頭・乳房は脹痛せず,食欲があり,二便は調うも,胸満心煩ありて,しばしば嘆息し,口は干き苦い。
脈は沈弦やや数,乳房に熱なく,質軟かく,腫塊や結節は無い,腹壁は薄く,圧痛なし。

乳衄血と乳頭陥といえば乳岩の症状のようだが,乳房の質は軟かくて,腫塊結節が無いゆえ,乳岩ではない。
胸満嘆息し,口苦心煩あり,脈は沈弦でやや数となれば,病源は肝鬱であり,それが久しくして化火傷絡して衄となったものである。
乳頭は肝の外絡に属する故に乳に反応が出たのである。
今 岩ではないと云うが,気滞が解けず,長く此れが続くと,頑痰や死血と結んで,岩にならないとも限らない。
舒肝解鬱・清熱止血を治療法とする。肝気が解けて,気血が和せば,悪化する虞れはない。

四逆散加味(柴胡・枳実・白芍15 甘草・大黄10) 五剤

二診:二剤で,泣血は止り,胸満心煩も亦軽くなった。原方から大黄を去って再服すること五剤。
四逆散原文,配方,方歌,四逆散加減運用医案 より

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