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稀薟草1

以下は私が1997年の『中医臨床』通巻71号(Vol.18 No.4)で「豨薟草のあれこれ」と題して投稿したものです。

 私は稀薟草を煎じ薬に用いるのが好きです。香港につてがあった時は他の物と一緒に2Kgづつ航空便で送って貰っていたのですが最近それが底をついてきました。ところが今は事情が変化して香港のつてが無くなって入手する方法がなくなりました。問屋さんに相談したけれどどうも従来の輸入品目ではないので駄目らしい。どうしても無いと困る品物なので困っていたところ先日、野山を散歩していてふと見やると、あるではないか、道端に図鑑の写真そのままに、か細く生えているではないか。私は小躍りした!今が花の時期で真っ盛りである。

 さて調べてみるとこれは一年草で、種を絶やしてはならないようだ。種が落ちるまで待っていては今度は枝葉が枯れてしまう。そこで半分程を採集することにして、残りの半分は来年用に種がこぼれるままにしておこうと思った。

 翌日、剪定鋏と段ボールの箱とロープを持って再びその場所へ出掛けた。道端に生えている稀薟草は工事のダンプカーの埃を浴びて汚れているので崖っぷちを探すと、見つけた、あるある!高さ2m程のいたどりやアメリカセンダングサの草むらの中に混じって負けず劣らずの背丈まで育った逞しいほどの稀薟草の群生である。これなら直ぐにでも大量の採集が出来る。
がさぶらをかき分けかき分け、汗まみれになって30分程もすると抱えきれない程の量になった。段ボールを解体して採集した稀薟草を簾巻にしてロープで結わえると、ざっと15Kgほどある感じだ。乾燥しても5Kgほどになるだろう。これだけあれば一年間は大丈夫だ。

次の日から瓦屋根の上で干し始めた。乾燥しやすい植物で、二日もあれば殆ど仕上がる。押切りで荒く刻んでひとまず家の中へ取り入れ、あとはこまめに枯れ葉やゴミを取り分け、もう一度刻み直して生薬に仕上げると言う訳だ。

 本草書を読むと稀薟草には「小毒あり」とある。それを「苦寒濁悪の性」と言い、修治して「清香甘美の味」にしなければならないのだけれども、その方法というのが酒とまぶして蒸して晒すこと九度を繰り返すこととなっている。そうすれば「濁陰の気」が無くなって「透骨捜風」の功能を発揮する事が出来るとある。しかし、これはかなり煩雑なことである。酒がいくらあっても足りない、とても出来そうにない事だ。

そこはさておき話を進めましょう。痺病のテキストには「およそ痿痺瘫痪の疾は肝腎の虚に加えて風湿が内を襲うものである。」とあります。
それに対して本草書では「この草は臊気といって厭な臭いがするので専ら肝に入る。肝は血を蔵する故に血分に入るという。生は苦寒で血中の風邪湿熱を散ずる。ひとたび製煉を経れば甘温に転化して去風逐湿の中にも肝腎を補益する功能が出来る。」とあり、だから一品二効でどちらにも役立つ便利な薬草だという訳である。

また、稀薟草について「李時珍は肝腎の風気・四肢麻痺・骨痛膝弱・風湿諸瘡を治すと言っている。昔からの『風薬というものはどうしても燥血の傾向がある』という言葉はこの稀薟草のためにこそ言われることである。しかし養血滋陰の品を配すればその弊害も防ぐことが出来る。」と言う訳で修治を省略しても何とか使うことは出来そうである。

もうひとつ、山を歩くと良く見かけるのは臭梧桐(くさぎ・臭木)です。その葉は地方によっては茹でて干しておいて正月になると大豆と煮て食べる習慣があるものですが、これも「両足痿軟となり歩履難儀して・・・」というのを治すのに使われます。これの単味の商品で「八角梧桐片」というのを中国土産に貰った事がありますが同じ効能書きでした。この臭梧桐と稀薟草を合わせて丸薬にして使うとより一層の功能があるとの事です。

 稀薟草を見るとその近くにある「現の証拠」のことが思われます。同類は「老鸛草」として中国では稀薟草と同じ様な使われ方がしています。日本では「現の証拠」は専ら胃腸薬の役割しか与えられていませんが、稀薟草にある去風湿薬としての効能が「現の証拠」にもきっとあるように思われてなりません。何よりの証拠に稀薟草に掻痒を治す働きがあるのと同じように「現の証拠」を風呂に入れて湿疹や蕁麻疹の掻痒を治すという習慣が日本には残っているではありませんか?立派な去風湿の作用です。「現の証拠」の"復権"のために皆さんに追試をお願いするものです! 97/10/07

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