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病汗五源

“陽が陰を動かすのを汗と謂う”,汗を作る源を,汗血同源と曰い,或いは汗は津の化したものと曰い,また汗は心の液と曰う。
これらは生理から云うのか、病理から云うのか,人をして迷わせるところである。
余が理解するところでは,病汗に五源あり,即ち木熱流脂の“油汗”,火灼気騰の“気汗”,土鬱湿蒸の“黏汗”,金迫水結の“凉汗”,水泄精奪の“精汗”である。

人身の気は冲和なるを貴とし,陰陽が変則すれば病を生ずる。陽が動いて陰を蒸すと汗となる。
陽とは火也,火が静かなら木火土金水の中に蔵される。動くとは火となって出ること:木を擦って火を取る,石を撃って火を取る,金を打って火を取る,土を掘って火を取る,水が動く処にも亦火あり,火態は不同にして,其の勢いも亦強弱の別あり。
陰とは水也,“人身を内養するのは精、津、涕、唾、気、血、液の七般の陰物なり”(《医理》)。水寧なれば其の道を循行し,躁なれば流れ,溢れ,滲み,脱し,或いは泄す。それぞれ病汗の機による。

木熱流脂の“油汗”
《柳州医話》:“木が熱すれば脂を流す,それは肝火と痰による。”
王孟英の賛に曰く:“此の語はあまり聞きなれないが,余はいつも雪羹(みぞれ)、竜薈を以って痰を治すが,それと魏君のいうところと暗合している。”
筆者の解釈では,素体が湿盛の人は,土気が旺じて木を侮る。木気が不暢なれば,其の人の情志は不遂となり,久しければ木鬱から熱が生じ,煉津して痰となる。痰が内聚すると,体の局部は津少脂多となり,火は津の制を受けず,勢いは更に甚しくなり,直に脂を烤く,脂は火烤を受けて油となり面に出たり,背に流れたりする。只痰聚の処に因り,痰火互結の患となる。是れは脂が汗になったもの也,此れを治すのが王孟英の専門である。

火灼気騰の“気汗”
火灼気騰の汗は温病火熱の邪が気分、血分に充斥した証に現れる。
唐容川は《血証論・汗血》に曰く:“陽が陰に乗じて外泄すると,皮膚に血汗として発する。”
気分、血分の火熱の邪は,津血をオーバーフローして,気汗を発する。即ち唐容川の謂う陽乗陰である。故に其の証は気分に大汗出を現し,血分に汗血即ち肌衄を現す。其の人は内に痰食瘀の阻がなく,裏気は暢達しているが,但だ火邪のみ独り盛んなり。熱勢は甚だ深く,部分の津液が火を被りて気に直化し,外へ騰溢する。是れが気汗であり,此の気分を治すには白虎湯を用いて,血分には清熱凉血の法を用いる。

土鬱湿蒸の“黏汗”
土気が壅滞すると,運化は失常する。湿淫が内にあり,肌腠に弥漫するのを,尤怡は言う:“人の気の湿は,太陰の化す所で,気交の分に在る。土は四気を兼ね,寒熱温凉,升降浮沈は,其の中に在り,上下中外に分けて治すべし。四気に化すゆえ,淫は上下中外に散逸し,到らざる処なし。”
湿性は黏滞で気機を阻み易く,久しくなれば湿鬱化熱となり逼湿して膚表に外滲する。其の性が黏膩だから,黏汗と曰う。是れは湿が汗になったものであり,治すには三仁湯の類が良い。

金迫水結の“凉汗”
金迫水結の“凉汗”とは即ち謂ゆる“冷汗”である。
張景嶽曰く:“汗証に陰陽あり。陽汗とは,熱汗也;陰汗とは,冷汗也。人は但だ熱が汗となるとは知るが,寒も亦汗になるのを知らない。謂ゆる寒とは外寒に非ず,正に陽気内虚なるを以って,寒が中に生じ,陰中無陽となる。陰中無陽となれば,陰は主とする所がなく,汗は気に随って泄する。故に凡そ大驚、大恐、大惧は,皆能く人をして汗出せしむ,是れ皆陽気の頓消であり,真元失守の兆である。其の甚しきに至っては,如えば病后、産后或いは大吐、大瀉や,失血の后に,必ず汗出が多くなる。”
筆者は陽気が大傷し固護の職を失えば,元陽の気は亡びんと欲し,水寒が金を射て,金中に火が出るものと解している。金凉だと水は冷え,水は頓に結ばれて気に随って脱出し,遂に魄汗淋漓となる。其の人身は常に清,粟々として寒く,膚は冷えて冰の如し。是れぞ水汗なり,微なれば,正気を扶け,玉屏風散で収斂し,甚しければ,芪附湯の任とする。葉香岩曰く此れは“鎮陽理陰”の法なりと。

葉天士《臨証指南医案》中に一医案あり:朱三六。脈微にして汗淋,右脇が高突して軟,面色痿にして足冷,食べなければ飢えを覚えるが,食が入るとすぐに飽きる。此れは陽気の大傷,衛の不擁護,法は当に封固すべし。人参、黄芪、制川附片、熟白朮。

此の案中の脈微は陽気弱の象,右脇高突にして軟は金中の火が出ようとする象である。

水泄精奪の“精汗”
水泄精奪とは,其の人が怠惰不振,疲乏無力となり,言語するも懶く,睡眠するばかりで,時々濈然として皮膚から汗が泄する。此れは水失封蔵に因り,陽気の精が水に随って奪われるものなり。是れは精汗である。精汗を治すには,桂枝が最善である。
病汗五源 より
中国中医薬報 2010-06-11

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