« 埋もれた良書 | Main | 便秘一半夏瀉心湯 »

乾癬を汗法で

臨床における汗法の応用は,《内経》の“其の皮に在る者は,汗にて之を発する”というのが指導原則となっている。筆者は曽つて銀屑病になり10年の病歴という者を汗法で治す機会があり,それは急性の爆発患者だったが,効果が良好だった。

喬某某,男,19歳,2009年4月25日初診。
慢性の銀屑病が急性汎発して2ケ月余のケース。
四肢は厥逆し,皮損部は多数の緑豆~黄豆大のもので,それが全身や,頭面、躯干、四肢、手足に遍布しており,色紅く,鱗屑が多い。汗が出ない。左脈は緩滑,右脈は細弱,舌苔は白膩でやや厚い。

麻桂各半湯加味(麻黄・桂枝・杏仁・甘草6 白芍9 白僵蚕・蝉衣6 小薊30 槐花10 蒼朮6 蒼耳子10 白鮮皮15 大黄6 生石膏15),4剤。生姜7片,大棗3枚,大米10粒を以て引とする。
生冷の飲食を禁じ,厚着にし、太陽の下で,軽く長時間運動をさせ,薬は必ず温服とし,服薬后は温覆して微汗が出るようにさせた。

4月29日二診:胸部に微汗が少し出たので,上方を継服させた。

5月13日三診:汗出部位が多くなり,汗が出た処の皮損は好転している。面部の出汗が少く,舌苔は白膩が甚しい,舌下は暗く,左脈は細,右脈は浮弱。

麻杏苡甘湯加味にて湿邪を除去する。
(麻黄10 桂枝9 杏仁6 甘草5 薏苡仁15 白僵蚕・蝉衣6 小薊30 槐花10 蒼朮6 滑石30 公英15 荊芥・防風10 白蔻仁6 半夏曲9 羌活・石菖蒲・姜黄6 大黄5 炒白朮・藿香6 焦三仙15)

膩苔が薄くなったら,越鞠丸方加減にて散鬱と補気陰をする。
(川芎15 蒼朮9 神曲30 梔子・淡豆豉10 麻黄6 連翹・炒山楂・茯苓・半夏・炒莱菔子10 陳皮6 黄芪・黄精・益母草30 蘇葉6)。7剤。

5月23日四診:前回の第一方を3剤服用した后に方を換えたら(越鞠丸方加減 ),皮損が薄くなり,痒く,面部が紅くなった。双手の脈は緩弱,舌苔は薄くなり,舌下は紅潤である。
(麻黄6 羌活3 白蒺藜15 荊芥6 川芎15 蒼朮9 神曲30 梔子・淡豆豉・連翹・炒山楂・茯苓・半夏・莱菔子10 陳皮6 黄芪・黄精・益母草・白茅根30)連服すること1ケ月。

6月20日五診:左脈は細弦,右脈は緩滑,苔膩。皮膚は乾燥していない,苔膩,故に前方より黄芪、黄精、白茅根を去る。体内の湿邪を温燥する力を強めるために,草果5g,干姜12gを加入。7剤。

7月1日六診:双手の脈は細弱,苔膩は減り,上火せず,出汗が足りない。脈弱は暑湿の阻滞と考慮し,方中に香附・厚朴・陳皮6gを加えて理気化湿の功を強めた。汗出が不足する故に生姜7片を加えて引薬とする。それでも汗が出なければその都度、生姜7片ずつ増やす。

7月8日七診:加えた生姜が49片になって,ようやく汗が出た。微に牙痛あり,生姜は49片を維持する。

7月15日八診:出汗が増えたので,49片の生姜のまま,更に温白酒一両を,薬后に服用して引とする。

7月29日九診:出汗がゆきわたり,皮損の大部分が消失したので,一周后に停薬させた。
停薬后は毎日温白酒3両(150ml)を飲み続けさせ,日光浴、多動、厚着、辛味の温熱食物の多食を堅持させた。停薬后も好転は持続し,2ケ月后に皮損は全部消失した。

按:本例の患者の治療中で,用薬は一貫して辛温を主とし,寒凉、滋膩の佐薬は最少としたのは,“汗出して解す”を目的としたからである。また得効した原因の一つに,大量の生姜、温白酒 等の辛味温熱食物を使用したことがある。
孫思邈は《千金方》中の第二十六卷に“食治”専篇を設けて,“医たる者は,先ず病源を洞暁し,其の犯す所を知り,食で之を制しなければならない”と強調しているが,食物だけではなく,日光浴、運動、着衣等もみな治療作用になっている。筆者は食物の偏性を利用して患者の体質を調整し,日光浴、適度な運動、着衣による求暖と合わせて“四多”と称し,愈えた后も再び復発しないようにしている。それが《黄帝内経》の“未病を治す”という主旨であろう。
其在皮者 汗而发之——汗法治银屑病案 より

|

« 埋もれた良書 | Main | 便秘一半夏瀉心湯 »

治験」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 埋もれた良書 | Main | 便秘一半夏瀉心湯 »