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升陥湯

《医学衷中参西録》(黄芪20 知母10 柴胡・桔梗5 升麻3)
気分が虚極下陥すれば,人参、山萸肉を加えて肺気の耗散を収斂して,升ったものが再び陥ちないようにするのが佳い。
若し大気下陥が甚しく,少腹が下墜したり,疼痛すれば,升麻は5gか2倍の6gにするのが宜しい。

[主治]胸中の大気下陥,気短不足して息ができないか,努力して呼吸するので喘に似ている。
或いは寒熱往来したり,咽干して渇したり,満悶怔忡したり,神昏や健忘となる。
其の脈は沈遅微弱で,関前が尤も甚しい;其の劇しき者は,六脈不全や,参伍不調となる。

[証析]気短不足とは息切れのこと,或いは努力しないと呼吸できないので喘に似ている,それが本方の主証である;胸中の大気下陥が,此の証の病機である。
少陽三焦の衛気の升降出入が,即ち大気である。

[方義]此の証を治すには陥ちた陽を升挙させること,陽気が上升すれば,気短は消失する。
黄芪には益気升陽の功がある,気虚なら補わなければならないが,気陥だと升げなければならない,故に是れが本方の主薬である。
配伍の桔梗、升麻、柴胡の三薬は輔という構成である。
大気は三焦を行るというが,実は肺脾肝腎の四臓の升降出入のことである。
気が能く上升するとは,肝の升発,脾の升挙,肺の升提をいう。
肺気の升提には桔梗に如くは莫く,脾気の升挙には升麻に如くは莫く,肝気の升発には柴胡に如くは莫し。
本方に三薬を同用すると,上中下の三焦の升発の機を助け,下陥の陽を挙げ,気が復帰すると短気の証は愈える。
方中の桔梗が肺気を升提するのは,桔梗に祛痰泄濁、泄肺利咽の功があるからで,肺脾両系の衛気上升の路が宣通するので,升陽挙陥の目的が達成される訳である。
咽喉は肺脾両系の津気の升降出入の関であり,関門が開けば,気は不陥となる!
滋陰清熱の知母を佐とするのは,黄芪の温燥を制するためで,無熱ならば用いなくてもよい。
若し気分虚極なら人参、山萸肉を加えて元気生発を助け,肺気耗散を斂し,心気虚損を補う;少腹下墜、作痛すれば,升麻の用量を加重し,偏虚、偏陥にあわせて加減する。

注意点
1.上焦の気を降すには麻黄、杏仁が宜しく,中焦の気を降すには陳皮、厚朴が宜しく,納気帰腎には沈香が宜しく,潜鎮肝陽には赭石が宜しい。これは本方の用薬とは相反するが,あわせて考えればより深く気機升降の道理が理解できる。
2.本方証が補中益気と異るのは,二方ともに気陥不升に対するものだが,升陽挙陥の法則には,証象、病機、立法、組方においていささか相違がある。
本方は気短が主証で,病は上焦の胸中に在り,胸中の大気下陥に属し,気虚が主要矛盾ではなく,治法は偏に升陽である;胸中の気陥は上焦に関するものである,故に肺気升提の桔梗を配し,升麻、柴胡と共同して三焦の気を升挙し,升陥が主、補気が輔という配伍形式になっている。
補中益気湯はそうではなく,其の証象表現は表、裏、上、下、気、血、津、精の各方面にわたり,中気不足、清陽下陥の機理に属する;気虚が主である,故に治法は補気に偏る;所用の人参、黄芪、白朮、甘草は全て補気薬物であり,兼ねて升麻、柴胡を配して中下二焦の陽気を升挙する。
『中医治法與方剤』より

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